I love you.


「あのね、今日教科書忘れちゃったの、見せてくれる?」
珍しくクダリ君が古典の授業に教科書を忘れたらしい。
手を合わせてお願いと言ってくるクダリ君にダメというわけもなく、いいよって答えると丁度チャイムが鳴った。
机を合わせても、いつものように教科書での筆談を始めようとしないクダリ君。
そういえばクダリ君と前何か話してたなあって現国の教科書を先生に見えない様に隠れて見る。
『僕ら自分の苦手な授業入れ替わってる』
っていうクダリ君の文字に「あ!」と声が漏れる。先生に気付かれてないことを確認して、ノボリ君に見えるように教科書に書く。
『もしかしてノボリくん?』
私の文字に目をまあるくしたノボリ君。私はとんとんと教科書の余白を叩く。
『ばれちゃいましたか』
『クダリくんがいってたから』
『そうだったんですか』
存外悪筆なノボリ君の文字に驚きながらも筆談を続ける。
『忘れるなんて珍しいね』
『いえ、申し訳ありません。わざとなのでございます』
長々と敬語を使い書いていくノボリ君にちょっと笑ってしまう。
『なんで?反抗期?』
『どうしてそうなるんですか、話通りの面白い人ですね』
『クダリくん?』
『ええ、彼女だから手を出すなと言われました』
私は驚いて顔を伏せる。ダメだ、私顔を上げたら先生どころかクラス中にいろいろばれちゃう。
「うぅ」
顔は嬉しくて緩んじゃってるしすごく恥ずかしい。
くすり、と小さく笑いが聞こえる。
「笑わなくっても」
小さく呟けば、またくすりと笑いが聞こえてきた。
『どんな方かと思いました』
『(´ 3`)』
『あの根っからの理系にあんな素晴らしい告白はもったいないでしょう』
『まさかノボリくんだったの!?』
『気づかなければもらってやろうと考えてました(ニヤリ』
『ノボリ君!?』
『冗談です』
真面目な顔してすごい冗談を……。
『家に帰ってくるなり、「月が綺麗ですね」って同じ顔に言われた私の気持ちがわかりますか』
ノボリ君の深いため息に私も笑ってしまう。ノボリ君ってわりとおもしろい。
『お察しします(笑』
『全くです、仕方なく意味を教えましたけど』
『ああ、やっぱりノボリくんに』
『今度は理系らしい告白でもしてくるかも知れませんね』
『た、のしみにしときます』


「なまえー!!」
私の後頭部が衝撃を感じると共に抱えられるように頭を引き寄せられる。
「なんで机くっつけてるの」
ノボリ君を敵かなにかのように睨むクダリ君が教科書に目を向ける。
「教科書、ぼくだけのはずだったのに」
私の頭を抱き抱えるようにしている腕の力が強くしながら、私の教科書に手を伸ばすクダリ君。
「よく愚弟を選びましたねってノボリ!」
なんてこと言うの!!って食って掛かるクダリ君が、その直後ぷしゅーと空気が抜けたみたいにしゃがみこんだ。あ。
「こんなの、反則」
『だってすきになったんで』
我ながら恥ずかしいこと書いたなってことは認めようと思います。
H25.04.01

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