ブラック、ミルク、カロリーオフ


「むー」
私がサイコキネシスを使いこなせるようになったころ。
私は元人間だったから、コーヒーを淹れたり、高く積み上がった書類の整理をしたりとそれなりに役に立ててきたところでした。
「むう」
徹夜で書類を仕上げるノボリさんとクダリさんにコーヒーを淹れて、机の端に置く。
そんな私には目もくれず、充血した目で書類に向かうノボリさんとクダリさん。
私は邪魔をしないようにとノボリさん達が行けない見回りにと思い、ドアから出た。
最近は夜出掛けるのが怖くない。一度死んだからか、ゴーストタイプだからか。
指差し確認、異常無しっと。指はないけど。



「なまえ」
「むう?」
「こちらへ」
手招きされて開かれた手のなかに収まれば撫でられる。ただ何をするわけ、撫でられる。
私がポケモンだからなのか、それとも私のトレーナーがノボリさんだからか、それがとても心地好い。
「貴女が来てから初めてですかね、こんなに忙しいのは」
そんなことはない。いつも私が人間だった頃の数倍も忙しそうだ。首を振ってみせる。
「むう」
「おや、それはどういう意味でしょう?」
首を振った意味は伝わっていないようだ。
「むー」
「何か言いたいのでしょうね、貴女とても頭がいいようですから」
書類の整理まで出来るのには驚きました、と呟くノボリさん。そりゃ私人間でしたからそれくらいは。
「むう」
この頃よく思うけれど、言葉が伝わらないのはこれほどまでにもどかしい。
ポケモンたちはそれでもトレーナーに伝えようとするのだと、改めて確認する。
私はすこし考えて名案を思いついた。
「むーぅ」
サイコキネシスでノボリさんの頭を撫でてあげる。そっと、優しく。
「なまえは随分上手になりましたね」
「むうむう」
でしょでしょって擦り寄れば、撫でてくれるノボリさん。私がやるのもたまにはいいけど、やっぱりこっちの方がいいなぁ。


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