メランコリア


今日は、お出かけは諦めましょう。

結露した窓の外を見ながら、ノボリさんはそう言った。私もそっと覗けば、雨が降っているのが分かった。
出掛けると思ってた私は、残念だったのかなんなのか自分でわからないまま、そとんと床に落ちる。
これでは当て付けのようだと急いで浮かび上がる。そんな私の様子を見て少し目を伏せたノボリさん。私のさっきの行動をもしかして勘違いされたのかもしれない。
「むう、むう!」
そんなことないと私は首を振った。ノボリさんの視線が窓の外へ向く。
ノボリさんの手持ちの人たちはバトルの疲れと雨のせいかモンスターボールから出てこない、出てきていてものんびりと横になっている。
シャンデラさんは炎タイプだから全然出てこない。
今日は久々に外へ連れていってくれる約束だったのだが、雨の中出て行くわけにもいかず今日は家にいることになったのだ。
ノボリさん自身とても忙しい人だから、休みの日の方が格段と少ない。今日はノボリさんも休んだ方がいいはずだから丁度良かったのだ。
「なまえ」
「むう」
「すみません」
「むー!」
何度も謝るノボリさんにイラッときて軽くずつきすると、ノボリさんは笑いを溢した。めずらしい。
私は気にしてないと伝えるためにくるくる回る。こういうふうにしか伝えられないのは大変だなあって他人事みたいに思う。
ノボリさんの後ろに回って短めの髪を引っ張る。
「!」
びくっと反応したノボリさんをくすくすと笑えば、「こら」と怒られてしまう。
「むー」
そのくらい許してよって言って私は周りをくるくる回る。
「いたずらばかりしているとあなたの好きな甘いきのみはお預けですよ」
「むー!!」
止めて!!とノボリさんのご機嫌取りに腕にすり寄る。
「現金ですねえ」
「むう」
だってこういうやり方しかわからないから仕方ないんですって言い訳しながら、心外だとすり寄るのを止めてソファーに落ちる。
力を抜くと軽いものが落ちるみたいにゆっくり降下して私はすこし好きなのだ。
「おや怒らせてしまいましたか?」
私の降りた先の隣に座るノボリさん。
「むー」
「なまえ」
ノボリさんは続きを言わずに二人分くらい空いていた間を詰めてよしよしと撫でてきたのだ。
うーん嬉しいには嬉しいんだけど、最近本当にポケモンになったなあって思ってしまう。
「むう」
まあ意地を張っても仕方ないから、その手に身を委ねる。さすがのサブウェイマスター、ポケモンの扱いはお手の物。気持ち良すぎて意識飛びそう。
私も何かできればいいんだけど……。
少し疲れた顔のノボリさんを見て思う。
私に出来ることってなんだろう。
久しぶりに手も足もない、ふていけいな自分を呪った。

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