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「ぴかっ」
着せてもらった私は、自分というよりはピカチュウがオシャレしてる可愛い!って気持ちでくるくる鏡の前を回ったりしているわけだ。
「かわいい!」
「ちゃあ」
だろーと膝に抱きつけばぎゅーと抱き締められて、きゃーきゃー騒ぐ。
「ね、ね!リボンつけていい?」
「ぴっかあ」
興奮気味にピンクのリボンを片手に持っているクダリさんに頭を傾けて、耳につけてもらう。
「はいできた」
かわいいぃぃい!!
「似合うね、可愛い!」
むぎゅううと抱き締められる。つ、潰れる!
「お腹空いちゃった」
「ぴかあ」
確かに。と呟けばいきなり抱き上げられ、またリビングへ。
「今日のお昼なんだっけー」
「オムライスとコーンスープですよ」なんて言ってみるけど残念ながら、ぴーかちゅうと鳴き声しか出なかった。
「わあ、オムライス!コーンスープも!!」
うれしそうなクダリさんに作ってよかったなあって思いつつ、クダリさんに座らされた。
「はい」
「ちゃあ?」
やっぱりオムライスはくれないらしい。スープを今朝と同じ種類の皿に盛られている。
「ぴかあ」
「ん?欲しいの?」
「ちゃあ!」
「しょうがないなあ、はいあーん」
「ぴっか」
ピカチュウになったからか、なんとなく恥ずかしさだとか色々なものが飛んで行ってる気がする。
「ちゃあ」
「おいしい?」
自分で作ったものでもこう甘やかされるとおいしく感じるなあ。
クダリさんの大きな手がよしよしと撫でてくれる。
「ああ、コーンスープ服についちゃってる」
「ぴかあ」
脱ごうかって言われて固まってしまう。いや、それは仕方がないんだけど、私は今ポケモンなわけだし、さっきまで着てなかったんだけど。そう自分に言い聞かせて服を脱がされて大人しくスープを飲む。
スープを飲み終わった私は暇になってしまい、隣のクダリさんに構ってとすり寄る。
「うん、ちょっと待ってね」
「ぴかあ」
「もーダメでしょ」
「ちゃあ!」
「こら!」
がたとテーブルの上に乗れば、クダリさんがいつになく怒ってるようだ。怖い、怖い怖い!!
「だめって言ってるよね」
「ぴか」
「……じゃあ、座って待ってようね」
「……ちゃあ」
「イイコ!」
わっしわっしと撫でてくれるが、夢に出そうなさっきの顔で私は堪能できる余裕がない。
「なまえ……いつ帰るんだろう」
ぼそっと呟かれたその言葉に私は思い出す。
「ぴっか!!」
「ピカチュウ!?どうしたの!?」
私はクダリさんの手からすり抜けるように玄関に向かう。
そこにはピカチュウになる前の私が持っていこうと準備していた鞄があった。
「ぴか!ぴかぴかちゅ!!」
「なまえの鞄?なんで?」
ライブキャスターが鳴っているのに気付いたクダリさんが電話に出る。
『あ、なまえさん!?何かあったんです……か?ってクダリさん?なまえさんは?』
トウコちゃんの心配そうな声に悪いことしたなあって思いながら、どうやってここにいることを伝えようかと悩む。見上げれば、いつもでは考えられないくらい動揺したクダリさんの表情が見える。
「え、なまえ行ってないの?」
『……うそ!?こっち来てないんですけど』
うわあ、大事になりそう。
『心当たりないんですか?』
「……ある」
『え、どこですか!?私行きま――』
「ごめん、切るね」
ぷちっと頭上で通話が切れる音とそれと同時に座り込んでしまったクダリさん。
「なまえ……帰っちゃった……」
ぼろぼろと涙をこぼすクダリさんを見て、私はどうしようもない気持ちになる。
「ぴか、ぴか」
私、ここにいるよ。そう伝えようとしても伝わらないのも分かっていて私はクダリさんからこぼれる涙を舐める。
その瞬間、ぼふ!と爆発音がした。
「嫌ああああああ!!!」
人間の体に戻れたらしい。それから、最初私の着ていた服が散乱していた、つまり私はベタにも裸なのである。
「なまえ!!」
体を隠そうとする私を邪魔するかのごとくきつく抱きしめてくるクダリさんにもう少し落ち込ませておけば良かったと後悔した。


―――――――

アヤ様、リクエストありがとうございました!
そういってくださってとてもうれしいです!!
すごく楽しかったです←
とてもおいしいリクエストありがとうございます。
出来る限りリクエストに沿ってみたのですが最後の方は私の趣味です、すみませんんん!!!

H25.03.18

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