It's no use crying over spilt milk.


「ねむ、い」
眠気に目をレイプ目くらいに虚ろにして、ベッドへ飛び込んだ私。
「うっ」
男の声がした。
「わっつ?」
「発音おかしいでしょう」
呻きながら謎の声が私にツッコミをいれてきた。
「……どちら様ですか」
「……小さいベッドですね」
「それは、まあ私が寝られるんでいいんですけど」
私は近くの椅子に閉じかかっている目蓋をテープで留めるぐらいのつもりでかっぴらいて、目の前の推定外人さんを見る。
外人さんも眠いのか少し目を細めてだるそうに首を傾けている。こんなドS系キャラを私はきっと見たことがあるはず。ちょっと待て、人のベッドになにヒール履いてるんだこの人は。
「……お名前は?」
「なまえです、あなたは」
「インゴと申します」
「……もう、寝ちゃいませんか」
目蓋がだんだん落ちていく私の意識は遠くなっていった。
インゴさんってサブマスの英名ってやつじゃな、いです、か……。


私は椅子からずりっと落ちた。
そこには金髪外人おにいさんはいなくて、夢かと思って私は学校へ向かった。
首を寝違えた。いたい。なんて気楽に考えていたせいで三日後私はまた目を疑わなくてはいけなくなってしまった。
「oh」
夢ではなかったらしく、外人さんは私のベッドでふんぞり返っている。
うーんこれはピクシブで有名な海外マスってやつですか。私はエメットさんがよかったなー。なんたってドSらしいですから、怖い。外人怖い。この人縦長過ぎないか。
「また会いましたね」
「えっとインゴさん、ですよね」
「ええ」
「なんでここにいるんですか」
そう、これを最初に聞くべきだったのに。
「知りません」
まあ、本物のインゴさんなら知ってるはずはないですよね。だってこれはもう逆トリってやつじゃないですか!!


それから数日置きにやってくるインゴさんはあまり睡眠欲の強い人ではないらしい。
「はろーインゴさん」
「Hello、ですよ」
「Hello!」
「上手ですよ」
インゴさんは私を飼うぐらいな気持ちなのか、頭を撫でてくれる。
「うわーん、インゴさんまじイケメーン」
華奢に見えそうで割と細マッチョならしいその腰に抱き着けば、きょとんとしてよしよしと撫でてくれる。
「今日も教えてください!」
「今日はどこですか」
「この……えーっと時制?それからこの関係どーたら詞です」
「そこに座りなさい」
スパルタで飴と鞭がお上手なインゴさんは私が冗談半分で学校の英語課題を教えてくれと頼むと、いいですよって言われてもうインゴさんは天使とか超えて私的に神じゃないかなって思ったり。
「そこは違います」
間違えたときのゴミでも見るみたいな目はつらいけど、すごく分かり易い。
出来たときのインゴさんからのご褒美が素晴らしすぎるのだ。
「よくできました」
「やたー!」
なんと、あのドSと名高いインゴさんが私に膝枕をしてくださるのだ。
「インゴさんちょーいい匂い」
「気持ち悪いです」
「気持ち悪くていいんですうう」
内臓でも潰してやろうかとと力を込めまくる。
「だめですね」
私を軽々持ち上げて、座らせるとギュッと力強く抱き寄せてきて、自分の胸板に私の顔を押し付けてきた。
きゅーんとなにかがぶっ刺さるような音がする。
「心臓すごいですよ」
「う、うっせーです!」
「ふっ」
ワラッター!!やっばいなんだろこれ、天使の微笑み!?ちょっとかっこよすぎじゃないでしょうか。
「インゴさん来なくなったりしないでくださいね」
「……」
「え、なんで無言?」
まあ確かにそれはインゴさんの知るところではないし、その上インゴさん的にはこれはただの迷惑と言われても仕方のないことなんだけど。
私は上がっていたテンションが下がってしまい、インゴさんに唇を尖らせつつ寄り掛かる。
「変なことを言いますね」
「へ?」
「ワタクシが今さらお前を逃がすと思ってるんですか」
その日私はなぜか知らないけれどインゴさんと一緒にポケモンの世界に帰ってしまい、こっちの世界に帰ることはなかった、なんちゃって。

―――――――

レン様、初めまして。リクエストありがとうございます!
インゴさんが優しい……インゴさんのイメージが違ったらすみません。
ドSか紳士かで悩んでしまいよくわからなくなってしまいました。
クーリングオフは可能です、すみませんm(__)m

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