別に不満なんてない。
学生というのはとにもかくにも周りに自慢をしたくなるものらしい。
証が欲しいものらしい。
私はそう思わないわけではないが、さらけ出すようなことはしたいと思わない。
×組の○○ちゃんに彼氏ができたとか、△組の××くんが二股かけてるとか、したとかしないとか。
そんなものはどうでもいいけれど。

「なまえー」
家にいる時、ぎゅっと抱き締められるのは嫌じゃない。とろけそうな声で私を呼ぶクダリは嫌いじゃない。

「おはよう、なまえちゃん」
外で呼び方が変わるのだって嫌いじゃない。はにかむ彼の顔も大好きだ。他の子に挨拶したって嫉妬なんてしない。

授業中目が合う度にいつもみんなにばれないように笑いかけてきたりするのも嫌いじゃない。
ばれないように私の解答の間違えをさりげなく教えてくれるのも嫌いじゃない。クダリは数学すごい得意だから。

デートはすこし遠出して、いろんなとこに連れていってくれるのも。全然嫌じゃない。
食べられちゃいそうな勢いのキスもさよならの時の軽いキスも嫌いじゃない。

でもそれ以外ないのは少し寂しいのだ。
私は目の前で、これまた遠い、地元とは離れたレストランで向かいに座るクダリにそう言った。
「つまり、なまえは物足りないってこと?」
「そこまで言ってない」
「でも、こういうのじゃだめってことでしょ?」
私よりも大きいくせにおっきなパフェに挑むクダリのことを恨めしく思いながらも、ついつい食べたくなったケーキを食べる。やっぱり私もパフェにしておくべきだった。目の前のそれをおいしそうに食べるクダリを見る。これはコンビニの方がおいしいなあって思いながらぱさぱさしたスポンジを口に入れる。
「違うってば、もっとなにかあるでしょ」
「言ってくれなきゃわかんない」
「行間読んでよ」
「ぼく文系じゃないし」
「関係ないし」
いちいち突っかかるようなクダリの言い方。
「ぼく、なまえと居られてすっごいうれしい。それだけじゃだめ?」
パフェを乗せたスプーンを差し出すクダリの笑顔に私はケーキを倒してしまう。
私は目を合わせるのが恥ずかしくなって、申し訳ないことをしたのかもと思ってその差し出されたスプーンを口に含む。いっそう口角をあげたクダリにむかついて、残り少ないケーキを掻き込むように、口に入れた。
「クダリ先生のばか」
「馬鹿じゃなかったら、こんなことしてないよ」
生徒付き合うなんてね。
何の気なさそうに笑ったクダリが離したスプーンがすっかり空になった皿にぶつかった。
H25.04.08

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