fondue


「なまえー」
「あ、クダリさん!」
念願の待ち人をいらっしゃいと迎え入れる。リビングに入ってすぐ、振り向いて私に笑い掛ける。
「バレンタインだよ、なまえ!!」
この人は雰囲気とか気にしないのか。
ため息をつく。まあ、私が今から雰囲気も可愛げもないことをするのだからお互い様ではある。
「うん、でも私が食べるけど」
「うん?」
まったくこの人は、自分がもらえるものと疑わないで可愛いですね。
待っててくださいね、と声を掛けてキッチンに向かう。
顔がにやけるのが自分でもわかるくらい楽しみなようだ。
クダリさんが来る予定より少し早めなぐらいにちょうど良くなるように、湯煎に掛けておいたチョコをクダリさんにぶちまけた。
「ぎゃ」
私がボールを持ち上げた時点で気がついてはいたみたいだけど、庇うように動いたから尻餅をついてしまったクダリさんを見下ろす。
「なまえ?これ、チョコ……?」
「はい、あまーいミルクチョコです」
「いや、え!?」
上に跨がって、チョコの掛かった髪を撫でて、べったりとコーティングされた耳に舌を這わす。
「あまっ」
「チョ、チョコだし」
耳に付いたチョコを一通り嘗めて、私の涎でベタベタの形の良い耳に達成感さえ感じる。ぴくぴくと顔を赤くして耐えるような表情をじっと見ていれば、赤いそれに誘われるように舌を耳の穴に突っ込んでみた。
「ひゃ!?」
女の子みたいな声が私の耳元で聞こえて加虐心をくすぐられる。わざと音が鳴るよう舌を出し入れしてあげる。
この人本当に男かな……って不安になるくらい女の子みたい。
「……ん、なまえ……やめ」
弱い力で頭を押し返される。抵抗してるつもりなの?って聞いたげれば
「ほん、と……まってぇ」
なんて返ってくる。
「かわいい」
ちゅぷ、ちゅぱと何度も遊んでいれば、いきなりぐるんと視界が反転する。
「クダリさん?」
「はあ、もう、なまえのえっち」
ぼくが貰うんだよ?
私を床に押し付け見下ろしてくるクダリ。
このまま押し切られるのはなんとももったいなく感じてつい、悪あがきしたくなる。
クダリさんの首に腕を回して、頬を伝うチョコを嘗めあげれば、吐かれた深い吐息が鼓膜を揺らした。
13.02.14

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