marry me


最初はクレープ。初デートで買ってくれた。
二つ目はミュージカルのチケット。
三つ目はディナー。
ミュージカルの後、エメットが通っているらしいおしゃれなレストラン。今は私も一緒に通っている。
四つ目はネックレス。
誕生日にもらったシルバーのオープンハートに赤い宝石をあしらったネックレス。
首輪代わりだから外しちゃダメって言われて、今日も私の胸元に飾られている。
五つ目はケーキ。私の好きなチョコケーキ。エメットの好みにも合うように少し甘さ控えめ。
次はクリスマスにキスをもらった。あと、お揃いのストラップ。いままでストラップが本体ぐらい付いていたエメットの携帯電話のストラップが一つになった。
次は可愛い花柄のバレッタ、私が髪切ろうかなってぼそっと言ったら切らないでってくれた。
次は私の初めてをもらってもらった。愛をもらった。
まだまだ思い浮かぶ。いっぱい、いっぱいもらった。
無愛想で意地っ張り。いつかエメットに言われたその言葉。でも、そんな私が大好きって言ってくれた。


エメットの家の前に着く。
「今日は、付き合って3年目」
つい口から漏れてしまう。嬉しくて気恥ずかしくて、どうしようもない。ちょっとだけ玄関前でストップ。
別に初めてじゃないけどいつになっても慣れないインターホンを押して、エメットの家に入る。ドアが開いた瞬間、香水とは違う良い匂いが私を包む。
「なまえー、大好き愛してる」
ぎゅっと抱き締められて愛の言葉を貰う。毎日くれる愛に溺れる私。
「今日はごめんね、わざわざきてもらって」
私を抱き締めたまま、済まなそうに謝ってくるエメット。今日はそのまま久々のお泊まりで少し早く来てしまった私を抱き締めてくれて。
「ううん、へーき。私も好きだよ」
「うー、今日インゴもいるけどごめんね」
「へ、へえー」
インゴさんもいるんだ。初めてではないけれどあの威圧感はちょっとなあ。
「あ、あのねなまえ……」
「なあに?」
「は、はいこれ」
ばっと突き出されたのはバラの花束。赤と白のきれいな花束。
うれしすぎて言葉が詰まる。伝えたいのに伝えられない。言葉にならず噛みしめる。
「きれい……。ありがとう、エメット」
受け取るとエメットの持っていた部分が少しだけあたたかくて、それでリボンが寄れていた。握りしめていたのかな。そう思うとすごく心があったかくなる。
私の反応に、すこしだけ表情を曇らせたエメットがそのまま私を家に入れてドアを閉める。
「付き合って二年だね」
「うん。私からもハイこれ」
押し付けるように渡した紙袋。
ネクタイピン。一週間ぐらい何をあげるか悩んで、二時間ぐらいどれにするか悩んでやっと決めた物。
でもそんなの知られたら恥ずかしいからついついおざなりになってしまう。
「ありがとう!!中身なあに?」
「あ、えっと……ネクタイピンだよ」
うれしそうに受け取ってくれたエメットにあんなあげ方しちゃったことを後悔する。
「えへへ、ボクが欲しいって言ってたの覚えていてくれたの?」
「……うん」
「ありがとう!!ほんとうれしい!!」
こんなふうに喜べばエメットも喜んでくれたかな。
「あ、そうだ、ちょっとリビングで待ってて」
そういうと私をリビングのソファーに座らせてどこかに言ってしまった。
バラは嬉しかった。
でも欲深い私の一番欲しいものがまだもらってない。
それは指輪。別に結婚願望があるわけじゃない。ただもらったことがなくて……不安なだけ。
正直言って私はかわいい女の子じゃないだろうし、エメットはきっと私より可愛くて美人な女の人とも付き合ったことあるんだろうなあとかいっぱい考えてしまって。
それに2年って結婚してもおかしくはないから、余計に私とはそういうこと考える気にならないのかとか。
「はあ」
ちっちゃくため息をついた。
「どうかされましたか」
「へ!?」
私の向かいに座っていたインゴさん。
いつの間に!?き聞かれた。どどどどうしよう、私声に出してないよね!?
「愚弟が何かしたでしょうか」
「い、いえ」
「そうですか」
沈黙辛いなあ、気まずい……。
「気を遣わせてすみませんね、安心してください。
今日はほかのところへ泊るつもりです」
「え!今日はいらっしゃるって聞いたんですけど」
「付き合って2年でしたか?そんな日にいたらギャロップに蹴られて死んでしまいますから」
「ふふ、夫婦じゃないですよ。私のことなんて気にしないでください」
「……」
思案するように黙るインゴさんに少し不安になる。なにか変なことでも言ったかなあ。
「一つ言っておきましょう」
「はあ」
「ワタクシは愚弟とあなた様のことは然程興味がございません。別れるなら勝手にしろとまで思います」
……ど、どういう。
「しかしアレがいつまでヘタレていてワタクシとしても兄として恥ずかしいばかりです。そのうえ珍しく行動すれば解りづらい。
特別ヒントをさしあげます。後で本人にでも聞きなさい。赤と白の薔薇の花束の花言葉」
花言葉……バラは愛とかだったよね、確か。でも花束の花言葉……?
「それではなまえ様、愚弟をよろしくお願いしますよ」
「え、あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」
それまでのセリフの意味はあんまりわからなかったけど、これはつまり応援されてるんだよね……。
「インゴさんありがとうございます」
少しうれしくなってお礼を言って世間話をしていると、エメットがどこかから戻ってきた。
「ちょっとインゴ!!なまえ誘惑したりしないでよ!!?」
私とインゴさんが喋っているのを見て、焦ったように抱き締めてくる。エメットってば、抱きつくの好きだなあって。
「残念ながらそんなことはしてません」
「なまえもインゴなんかほっといていいから」
そう言ってどさっと私の隣に座るエメット。
「ではワタクシはこれで」
もしかして私と話すために残っていてくれたのだろうか、足早に出ていったインゴさんの背中を見ていると、隣のエメットがまた抱きついてきた。
「なまえ、インゴなんて見ないで」
拗ねたエメットを宥めるように頭を撫でる。やめてと言われたが、そのわりに抵抗しないんだから。
インゴさんが言ってたこと、聞いてみよう。
「あのね、エメット」

白と赤のバラの花束の花言葉ってなあに?

――――――
白と赤のバラの花束の花言葉――結婚してください。
インゴさんの方が多い……

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