刺して


ピアッシングの描写があります。しかも嘘だらけです。
医療行為なので人に開けてもらっちゃだめらしいです。
危ないので開ける方は自分で調べて安全な方法を!!







「あ、なまえーこれあげる」
後ろから抱き締められつつ持たされたそれ。高そうな入れ物に入ったそれにちょっと戸惑っていれば、エメットさんは待ちきれないのか高そうなラッピングを乱雑に千切って中身……ピアスを取り出す。
「わ、私穴開けてないですよ?」
「知ってるよー」
私の耳たぶに触れながらにこにこと笑うエメットさんに悪寒がする。
「だから開けさせて」
「……い、いいいやです」
「えーなんでーせっかくボクとお揃いなのに」
よく見ればエメットさんに渡されたピアスは片方しかなくて、もう一つはエメットさんの形の良いすでに穴だらけの左耳につけられていた。
「……ほかのピアスは?」
右はいつも通りごてごてと重そうに光るピアスでいっぱいなのに左にはそれ以外ついていない。
「え?取ったよ?」
「なんで?」
「だってなまえとのだもん」
あ、でも右の許してね、ないともう落ち着かないから。えへへと笑ってそういったエメットさんを見ると、楽しみにしていたらしい。なんという罪悪感。というか今きゅんってきた。
お気に入りだと言っていたピアスもきれいさっぱりとってある左耳を触ろうとすれば手首を掴まれる。
「いいでしょ?」
「いた、くないの……?」
「正直ちょっと痛いと思うヨ」
うう、でも、こんなふうにダダこねてもエメットさんのことだから、きっと無理やり開けるだろうなあ。
「なまえお願い、ネ?」
熱を孕んだその視線にくらくらししそうでエメットさんの綺麗な目に飲み込まれそうになる。
「い、いいよ」
「やった!!ありがと、なまえ愛してる!」
ちゅっと私の頬にキスをしたエメットさんはどこからか、ピアッサーを取り出す。
「まあ許してくれるとは思ってたけどね!」
やられた、そう思った時にはもう遅くソファーに押し倒される。
「じっとして」
「や、ちょっ、待って、って」
「待てない」
私の体に乗り上がり、耳たぶに冷たい感覚。ことんと私の頭の隣に置かれた容器を横目で見れば消毒の文字、それから鼻にくる刺激臭に改めて本気だと体が固まる。
「怖い?」
余裕綽々と笑うエメットさんに素直に怖いと言いたくなくて、口を閉ざして目を逸らす。
「怖がっていいよ」
「エメ……っとさ……」
「かわいい」
エメットさんが私の耳に多分、ピアッサーを当てる。唾を飲み、ぎゅっとピアスの入った箱を巻き込んでエメットさんのシャツを握れば、嬉しそうに笑う。



「お疲れ」
唇にキスをされて目をあける。すこしだけ涙で潤んだが、多分泣いてはない。
気を抜いたら力まで抜けてしまい手足を放り出している私を満足そうに見下ろすエメットさんは、もうこの上ないくらい幸せそうに私に笑いかける。
「固定されるまで我慢だね」
大丈夫、手入れも全部ボクが教えたげる。
大事そうに私と、私が握っていたピアスの入った箱を見る。喉元まで出かかった文句は消えてしまった。
13.02.04

戻る


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -