糞暑かった
あの夏の出来事は。
何もなかったかのように消え去っていた。
すっかり涼しくなった屯所の縁側で、俺はごろりと寝そべっていた。あんなに青々と茂っていた庭の木も、段々と元気を無くしているかのよう。
「沖田隊長、ほら邪魔ですってば」
俺のせいで通れない山崎が、多大な量の書類を持って焦っていた。
「俺の上を跨いで行けばいいだろぃ」
「えっ…でも」
「──まあ、そんなことしたらせっぷくだけどなせっぷく。」
わざと低い声で脅してやれば、“ほらやっぱりぃい!!”と山崎は嘆いて地団駄を踏む。
それが面白くてカラカラと笑っていたら、不意に左半身に衝撃。
ちらりと見れば、青筋たてた土方がそこにいた。
「…痛ってえなあ、上司が部下蹴っていいんですかィ?いじめでさぁ。」
「お前だって山崎いじめてんだろ。──午後から会議だって言わなかったか総悟?」
あー…
そういやそう言われたような気がしないでもない。
「すっかり忘れてやした。ドウモスミマセンデシター」
「……なんでカタコト何だよ!!謝る気ねえだろ絶対っ」
「そんなことないですぜー。じゃあもう一回謝ってあげますかー?」
「てめえ総悟…この、「そんなことより、早くして下さい2人共っ!!!」
「「……はい。」」
案の定、騒いでいたら山崎に怒鳴られ、俺らはイソイソと会議室へと向った。