いつも通りの日常を過ごしていた筈なのに。
どこからか、俺らの歯車は、ずれてバラバラになって―――…
「ひーじーかーたー、まだ帰らないんですかぃ?」
夏の中旬。
ジリジリと熱を放つ太陽を憎らしく思いながら、俺は隣りで世話しなく動き回る土方に、小石をぶつけた。
「ってえな!お前も手伝えよ」
この糞暑い中、真面目に隊服をしっかりと着込んでいる土方を見て、鼻で笑ってやった。
「何が楽しくてこの糞暑い中、猫なんか探さなくちゃならねんでさぁ。勝手に独りでやって下せぇ」
――面倒うな事に、高官の可愛がってるお猫様が逃げたとかで。
受けなきゃいいものを、近藤さんは快くこの依頼を引き受けた。
「俺だって好きでしてる訳じゃねえっつの」
こんなの万事屋の糖尿病予備軍に任せればいいんだ、と土方はブツブツ独り嘆いている。
暫く猫を探していると、うっすら雲行きが妖しくなってきた。
黒ずんだ雨雲がのろのろと俺らの頭上に移動して、あ、と思った時にはすでに遅し。
物凄い勢いで、滝の様な雨が降り衝けた。
「おーこりゃ凄ぇや」
バタバタと痛いくらいに雨粒が俺を打ち付ける。
汗をべっとりかいてたので、さっぱりして気持ち良いくらいだ。
「――何、清々しい顔してんだよ!ほら、雨宿りする場所探すぞ」
「んなこと言っても」
雨宿りする場所なんて本当にあるのか?
回りは一面、緑。
土方は多少考え込んでから、何か思い付いたのか俺についてくるように言うと、思いっきり雨の中を駆け出す。
それに置いてかれないよう、俺も同じく駆け出した。
「あった…とりあえずここでやり過ごすぞ」
「ここは…?」
ついて行って辿り着いた場所は、古びた木造の小屋だった。
中に入ると、埃臭い匂いが充満していた。
「うっわ、汚ね。センス悪ぃぞ土方コノヤロー」
軋む扉を無理矢理閉め、濡れたスカーフをとりながらドカッと土方は腰を降ろした。
よくこんな埃まみれの床に座れるなと若干感心する。
「しょうがねーだろ。文句言うんじゃねえ」
「へいへい。…にしても、よくこんな所見つけやしたね」
近くにあったボロっちい布切れで埃を祓い、俺も腰を落ち着けた。
改めて小屋の中を見渡してみれば、何やら妖しいものがちらほら。
「昔仕事でここら辺でテロリスト達を取り押さえた時があったんだがな。その時奴等が武器庫として使用してたのが、この小屋だ」
「へえ…。良く覚えてやしたねィ。とゆうか土方さん」
淡々と説明しやがる土方にとりあえずまず、聞いてみる。
「そのテロリスト達……随分変態的な性癖な奴等だったんですねィ?」
淫具が見えるのは気のせいではないだろう。
薪や、棚からはみ出て見えるのはまさにそれ。
最近隊志達と見るAVに良く出てらぁ。
「……はあ?」
まだ気付いてないのか、はたまた慣れてるだけなのか。
土方は怪訝そうに俺を見た。