呼吸を繰り返す度に白い息が口から洩れる。辺りに活き活きとした植物は全くなく、吹き付ける風は凍えるようだ。確実に冬が訪れていた。

「土方さん、ミカンとって」
「自分でとれボケ」
「起き上がるの、怠いんでさぁ」

幹部達が寛ぐ居間で、炬燵に肩まですっぽりと入ったまま俺は強請った。何だかんだ言って土方は押しに弱い。子供のように駄々を捏ねれば最終的には甘やかす。俺はそれを分かっている。

「白い部分もちゃんと取ってくだせぇよ。俺あれ嫌いなんで」
「おい。俺は取りもしねえし剥きもしねえぞ」
「ありがとうございます。さすが副長だあ、優しいなあ、骨身に染みるなあ」
「人の話聞いてんのか!?」

勝手に話を進める俺に憤慨しつつ、ミカンを剥きはじめる土方。
満足そうに用意されたミカンを頬張るが、ゴホ、コホッと嫌な咳を吐き出してしまう。
お茶をまったりと啜っていた近藤さんは慌てて、蹲って咳を続ける俺の顔を心配そうに覗きこんだ。

「大丈夫か!?そういやあ、お前最近変な咳してるなあ。風邪か?」
「…コホッ…いや。別にそんなんじゃないですよ」
「しかしだなあ…」
「今のはただちょっと気管に入っちゃって。咽ただけでさぁ」
「ならいいんだか……なぁ、トシ?」

近藤さんが土方に同意を求める。だが土方は口の端を吊り上げて、微笑を浮かべた。

「そんなに心配するこたぁねぇよ近藤さん。馬鹿は風邪をひかない」
「やだな、別に今さらアンタの自己紹介なんかしなくたって分かってますよ!」
「俺じゃねえ!!お前だお前っ」

笑顔で挑発を切り返してやれば予想通りの返事がきた。俺に口げんかで勝てるとまだ思ってるのかこの人は。可笑しくなって本気で腹を抱えて笑いだす。






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