異常を察したのか土方は態度を一変させ、声を荒げた。

『おい!大丈夫か!?具合悪いのか!?』
「ばか……。うるせぇよ」
『馬鹿はてめぇだろ!本当は病気なんじゃねえのか!?山崎に嘘つきやがったな!』

つくづくアホがつくほどお人よしだ。少しドキリとした質問だったがここで本当の事を明かす訳にはいかない。何よりまずそれよりこの状況を打破しない限り、俺のこれからはないからな。

「いいですか、土方さん。多分ですがね、ヒントは磯です。さっきから臭くて堪らねえ。それと灯台。俺は一人では――つあ!!」
『総悟!?』

最後まで言い切る前に左頬に衝撃が走る。冷たいコンクリートの地べたに転がり、追い打ちをかけるように横っ腹を踏み潰される。さすがに容赦はないようだ。口の中に酸っぱいものが込み上げてきた。

「勝手なことしてんじゃねえよ。お前はだらしなく喘ぎ声をただ聞かせれば良かったんだよ」
「下手くそすぎて出るもんも出ねえ。俺のせいにするんじゃねぇでさぁ」

口元から滴り落ちる血を舌で舐めとりながら嘲笑う。案の定、トサカにきた男は二発、三発と俺を殴りつける。痛い。だが、すぐに刀で斬りつけられるより数倍マシだ。

目を覚ました時に感じた磯の匂い。そして小窓から差し込む目映い光。俺が閉じ込められているのは海沿いの倉庫だ。屯所からは結構離れている距離だが、時間稼ぎをすれば何とかいけるだろう。

けど、少しキレすぎなんじゃねえのか。

瞼が重い。頭が痛い。腹も痛い。殴る蹴るを続けられ、意識が朦朧としてきた。
だがここで目を瞑っては肝心な時に声がだせない。

「……ぐっ!!」

腹に渾身の一発をお見舞いされ、あっけなく俺は意識を手放した。










 沖田からの電話が一方的に切られ、土方は冷たい汗をひやりと流した。
隣で耳を澄まして聞いていた山崎は顔を青くして、必死で状況を整理している。

「ふ、副長。最後の切れ方はおかしいです。まるで殴られたような音が……」
「……どういうことだ。総悟は、」
「明らかに誰かに誘拐され監禁・暴力を受けています。最後の続きはおそらく自分以外にも人がいることを伝えたかったんだと思います。どちらにせよ、危険な状況、です」
「……」
「副長。局長にも俺伝えてきます!出陣しましょう」
「……」
「副長!?」

いつまでも黙りこくる土方に山崎は怒鳴りつける。信じがたいのは分かるか実際にそれは起こっていることなのに。

「早く行かないと沖田隊長が危ないんですよ!なに副長ともあろう人がびびってんです!?沖田隊長が死んでもいいんで――」

バキッと鈍い音を立てて土方の手の中にあった携帯が真っ二つに折り曲がった。
尚も力を入れ続けているのか携帯は完全に折れ、その半分がボトリと山崎の足元に落ちる。

「上等だ、山崎。誰がビビってるだって……?」
「いえ、あの、そのですね」
「御託はいい!さっさと全隊に出陣を伝えろ!!一分も惜しむな!!急ぎやがれっ!!」
「は、はいっ!!」


もはや土方の怒号によってただならぬ事件が起きたことを察した隊士達はすでに心構えができており、直ぐにでも出陣できる状態だった。山崎の伝達により沖田が危険な状況だということを知り、一瞬ざわついたものの土方の一喝で冷静さを取り戻す。

「いいか!今回の捕り物、生かして捕まえろ!洗いざらい吐き出させてやるぞ!」
「よし!行くぞお前ら、俺とトシに続けよ!場所の目星はついてある!」

おお!と声を張り上げた後、次々と赤い光を灯し物凄い数のパトカーが町中を駆け巡った。









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