「へえ、男のわりにはやけに白いな。女みたいだ」
手のひらで肌を滑らせてくる。ぞっと鳥肌が立って寒気を感じたが、男の発言には頭に血が昇った。
赤の他人ほど人の地雷を知らずうっかり踏むものだ。
俺は歯を食いしばり思い切り男に頭突きを食らわせた。もう一度だ。脳震盪でも起こしてしまえ!と再び頭を下げた。だが男に右手で抑え付けられ阻止される。
「……油断してた。女みたいでも力はそりゃあ男だ」
「て、めぇ」
加えて馬乗りになられ足も上手く動かせない。これじゃあ無抵抗になってしまう。
ここはあまり相手を挑発しないことが普通なのだろうが、今の俺は頭にきている。そういうことだ。
「女、女って……うるせぇよ。殺されてぇのか」
「そんなに嫌がることでもないだろう?陰間にでも売ればすぐ上位にいけるだろうよ」
「しね。この変態」
「心外だな。凌辱は暴力だ……男が好きな訳でも、お前に欲情している訳でもない」
「吐き気がする」
ぺらぺらとよく喋るな。明確な殺意を放っているくせによく会話するだけの余裕がある。
俺だったらすでに頭のネジがぶっ飛んでる頃だろう。実際、俺は限界を突破しているがどうにもこれだけ拘束されてしまっては身動きは取れない。だがこのままくだらない言い争いをしていれば後ろポケットに入っている携帯を弄る時間を稼げるかもしれない。
――あれ?
今さらになって気づく。仰向けになっているのにポケットに携帯が入っている感覚が感じられない。
俺はよほど驚いた顔をしたのか、男は心を読んだかのように苦笑して自分の着物の裾の中から俺の携帯を取り出して見せた。
「こんなの初歩だろ。まさか今気づくとは」
「……うるせぇ。返せ」
「まあそんなにお前が焦らなくても俺がかけてやるよ」
はあ?こいつ頭イッちゃった?
唖然としていると突然、自身を弄られビクンと身体が跳ねる。
「なっ……!?」
全体を包み込みつつ亀頭を触り、否応にも反応してしまう。
尖らせた舌先で乳首を突かれれば俺は先ほどより大きく身体を跳ねさせた。
「真選組は女に不足してるのか?それとも、」
「黙れ!!」
こんな、こんな下衆に反応するなんて。だって俺の頭の中はいつだってあの人でいっぱいで、夜だってあの人で……ああもう!!しね!!
顔を覆いたいのにできなくて目を固く閉じる。もう開き直って触る手は全てあの人だと思えば……。
「じゃあ、真選組に電話しようか。誰がいい?やっぱり鬼の副長かな?」
閉じたばかりの目をこれでもかというくらい見開いた。
「何のつもりでさぁ……」
「察しただろう?」
カチカチと携帯のキーを押す音が聞こえる。嫌だ、やだ、やめろ。
男は暫く画面を見て悩んだ後、ダイヤルを押し俺の耳に宛がった。
コール音が耳に響く。振りほどこうにも頭を抑え付けられたままじゃ何もできない。
心臓がどくどくと鼓動する。
『――総悟?』
聞きなれた低音に思わず喉が上下した。向こう側に伝わるくらいゴクリと音が鳴る。
それを何か飲んでいると思ったのか少し苛ついた声が届く。
『お前、今何時だと思ってんだ。いつまでも遊んで近藤さんに心配かけんなよ』
「……残念ながら、俺はそんな楽しいことはしてないんですよ」
『は?じゃあ一体どこに居るんだ』
迎えに行ってやるから。そう続く気がして泣きそうになる。
「実は……、ぁっ!」
膝で強すぎない加減で自身を刺激され、不意に声が漏れた。顔がみるみる熱を帯びていく。
唇を固く結ぶが、本能的に快感に抗えない。続けられる愛撫に段々と呼吸が乱れる。