とりあえずここがどこで、誰に攫われたかが問題だ。
山崎には遅くなると伝えてしまったし、真選組が異常を感じとってくれるのは二日はかかるだろうし。自分でなんとか解決するしかないだろう。

「芋虫みたいだなあ。一番隊、隊長さん」
「んむっ……!?」

またしても背後から現れ、俺の頭を踏みつけた。顔、顔を見せろ。
俺は暗闇の中目を細めて相手の顔を確認する。

「どこかで見たことあるだろう」

世間一般でも俺ら真選組の中でも重要視されていない顔だ。つまり指名手配でもなければ、凶悪な人物でもない。見たことなど微塵もない。けど何か引っかかる。
どこか、なんらかの形で俺の視界に入ったことがある顔。記憶の片隅にちらちらとそれがよぎる。

「よぉく思い出してみろよ。それとも殺した奴は一々覚えちゃいないか?」
「――っ!」

真上から鼻先ぎりぎりに刀を突きたてられ思わずハッと息を飲む。

「幕府の犬め……全員殺す必要がどこにあった」

頭上から降りてきた声は叫びこそしなかったものの、どろりとどす黒く冷えわたるような低い声だった。そうか、こいつ……一昨日の捕り物で見た。でも、こいつのいう通り俺は全員殺したはずだ。怪訝そうに眉を潜める。そんな様子を見て男はくっと笑った。

「不思議で溜まらないという顔だな。当然だ。あの場で同志は皆死んでいた。証拠に誰一人としてその場にはいなかった。あったのは生臭い血がこびりついた床だけだ」

当然だ。死体処理班は回してあるし、人物認識も行ったはず。

「お前が殺した中の一人は俺の双子の兄だ」

躊躇なく口元のガムテープを剥がされる。一瞬の痛みに小さく声を漏らす。
男は長髪の間から狂気に満ちた目をぎらつかせて俺を見下ろした。

「なにか言う事はないか。この人殺し」
「何を言わせたい」
「決まっている……死を持って償うと言え。許しを請え」
「……嫌でさぁ」

あの人を傷つけたんだ。もう一度殺してやりたいくらいだよ。

「傲慢な奴だな。必ず自分のしていることが正義だと思うのか」
「警察ってのは正義だろ」
「死刑にするまでもない反逆者を皆殺しにすることが正義だと言うなら狂ってる」
「お前こそ傲慢だ。その双子の兄を殺されたから俺を殺そうと思ったんだろィ。俺だってそうだ。大事な奴が殺されそうだったからその前に殺したまでのこと」

どちらの立場から現実を見渡すか。それによって180度世界は変わる。
おかしなもんだと鼻で笑ったら、何を勘違いしたのか男はカッとなって俺の腹を蹴飛ばした。

「……癇に障る野郎だな」
「そりゃあ、どうも」

縄で縛られてるおかげで直接的なダメージは少なかった。逆に助かったなと思っているといきなり両足を掴まれた。

「なに……」

がちんと聞きなれた音が耳に届く。両足首に手錠をされた。
大方、俺の腰から盗んだのだろう。今度は後ろに回っている手首にも掛けられる。

「そこまで俺が怖いかねぇ」
「馬鹿いうな。ただ殺すだけじゃ足りないだけさ……屈辱を味わって貰わなくてはね」

そう言うと男はナイフを取り出した。嫌な音を立てて縄が千切れていく。
あ、と声を出した次の瞬間。着物の帯が切られ、一気にはぎ取られた。一瞬で肌を露わにされ、つい動揺してしまう。






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