赤ちゃんの泣き声、院内のアナウンス。決して静かとは言えない病院に俺は来ていた。
先日あまりに病院に行けと催促されたので、渋々だ。幸い非番だったし暇もある。

「沖田総悟様、沖田総悟様ーっ!診察室へお入り下さい」

外科の受付窓から看護婦が叫ぶ。はぁいと気だるげに返事をして席を立つ。

「失礼しやす」

薄いカーテンを開け一礼をして中のイスに座る。
短髪の少し長い黒髪を後ろで結んだ、若めの医者だ。いかにもな眼鏡を指で押し上げ
笑顔をこちらに向けてきた。

「今日はどうしましたか?」
「俺はどうってことないと思うんですが、周りが言うので……」
「ええ」
「なんか、血?なのかな。飲んだみたいなんでさぁ」
「ご自分のですか?」
「や、多分他人の」
「……どれくらいの量を飲んだか分かりますか?」
「そこまでは覚えてないですね。職業柄、そんなに気にしないようにしてるし」
「そうですか……」

そこまで言うと医者はカルテにドイツ語で走り書きをし出す。
そしてすぐに採血をする羽目になった。まあ、これくらいは予想していたので
素直に検査に応じる。

「沖田さん、肌白いから採血しやすいわ」

着物の裾を捲りながら看護婦に腕を摩られる。
別にずっと家の中に居るわけではないのに俺の肌はずっと白いままだ。
姉上もそんな肌質だったから、親の遺伝なんだろう。別に不快に感じた訳じゃない。
なのに俺の胸は何故かじりりと掠れたように痛んだ。

「はい。終わりました。結果が出たらもう一度呼び出しますのでお待ちください」

時間の無駄だな。健康体を検査しても何もでないに決まってる。


三十分後に再び呼ばれ診断結果を報告された。俺はただ笑うことしかできなくて、
医者はずっと俯いたままだった。

「なんてことないですよ、先生」

――絶対に土方には教えない。殺されたって知らせるものか。
じゃないと俺ら姉弟はあの人をただ傷つける為に存在しているみたいで。
そんな風になるのは絶対、嫌だった。








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