「あれ?沖田さん、副長は?」
「知らね」
「知らないって……ってそのまま上がんないで下さいよ!」

水浸しになった体のまま家に上がれば水分を含んだ服独特の嫌な音がした。
スカーフを山崎に投げつけ即行で風呂場へと足を運ぶ。
湯船に浸かり冷えた体を温めながらしばらくぼけっとしていると脱衣所へ向かう扉が
軽い音を立てて開いた。

「あ、ザキ」
「あ、じゃないですよ。なめくじみたいに残してって行った跡を拭いて回るの
大変だったんですからね」

俺までベトベトですよ、と文句を言いながらシャワーを浴び始める。
後ろから水を掛けてやろうかと考えたが先ほどの件でそんな気分ではないことに
改めて気づく。喋ることさえ億劫に感じた。

「そういえば沖田さん」
「……ん?」
「本当に病院行ってみた方がいいですよ」
「お前までそんなこと言う。もう飽きた」
「いや、あはは。すみません。でも飲み込んだのが血液だったら
色々病気持っていたとしたら移るかもしれないから」
「そんなに用心すること?過保護な親みてー、うざい」
「局長が聞いたら泣きますね」
「暑苦しくな」
「それでいて汚く」
「だよなー。じゃ、今のセリフ後でしっかり伝えておくわ!」
「えええええええええ」

面喰って情けない声を上げる山崎が可笑しくて声を上げて笑う。
――すべてが億劫だ。けど無理してでも笑っていないと立ち直れなく
なりそうで。心とは裏腹に俺は就寝まで空元気を突き通し、やっと一人になった時に
静かに頬を濡らした。






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -