──目が覚めた。
目に入った見覚えのある天井を見て、屯所へと戻ってきたことを悟る。
きょろりと視線だけ泳がせ、辺りを見渡せば壁に凭れて眠りこけている土方が居た。
「土方さん……」
自然とその名を呼ぶが、土方は起きなかった。相当疲れが堪ったのだろう。
もぞもぞと布団から這い出て、近付けばフワリと煙草の香がして癪だかホッとしてしまう。
とりあえず背中の傷を確認したくて、着物をずらして見れば、包帯が丁寧に巻かれてあり一安心した。
「良かった…」
ポツリとそう呟けば、それに便乗するかの様に土方はゆっくり目を開けた。
「……何してんだ」
「──え?」
ちょい、と指差された先にははだけた胸元。そして着物をがっつり掴んでいるのは紛れも無く俺。
「あ、っ…と。別に襲ってた訳じゃありやせんぜ。誰がアンタなんか」
平静を整えているが、内心バクバクで今にも心臓が壊れそうだ。
でも、この人には、女々しいところなど見せたくなかった。
「……そうかよ。そういえば、どうだ喉の調子は?」
淡々と問われ、何のことかと首を傾げれば、土方は詳しく説明してくれた。
「お前、喉に何か詰まったみたいで酸欠になって倒れたんだよ」
「あぁ……」
「一応病院行くか?」
「嫌…いいでさ」
フルフルと首を横に振る。土方は心配そうに顔を歪めた。