「土方さん!!!」
「───っ!!」
苦痛に顔を歪めて、土方さんは床に膝をついた。呻きを漏らし、肩を抑える掌の下に見えたのは毒々しい程鮮やかな鮮血。
───斬られ、た?
土方さんが……。
ブツリと何かが切れる音がした。
「っ……総悟!」
次の瞬間には、土方を切り付けた野郎は血に染まり、返り血をここぞとばかりに浴びる。
止めろという土方の静止の声など今の俺には届かなかった。
一人、また一人──
俺の手によってもう二度と動かぬ肉の塊になってゆく。壊れた機械のように、振り上げる腕は止まらなかった。
「沖田っやめろ!」
鋭い金属音が響き、ガチガチと刀同士が攻めぎ合う。
「もういい!終わったんだ、沖田っ!!」
永倉がいくら呼び掛けても沖田が正気に戻る様子はみられなかった。灯を無くしたような暗い瞳のまま、無心に、本能的に目の前にいるモノを壊そうとしていた。
「──真選組も大層な獣を飼ってんじゃねえか」
奥の暗闇から、嫌みたらしく笑嘲いながら片目の男がゆっくり歩いてくる。その姿に土方は驚愕した。
「……高杉っ!!」
「…随分と派手に散らかしてくれたもんだ」
びちゃりと足元の血を踏み締め、高杉は苦笑を漏らす。辺りを見渡せば生き残っている者など、一人もいなかった。