「おぉ、やっときたかお前ら!」

近藤さんは、遅く入ってきた俺らを見てがははと盛大に笑った。
土方は近藤さんの隣りに、俺と山崎は隊士達側に座る。

「まったく、副長のくせに遅刻とは腑甲斐無いでさァ。ね、近藤さん」

「お前のせいだろーがっ!!」

ガバッと立ち上がった土方を、近藤さんがまぁまぁと鎮める。
ぽしょりと山崎が早くして下さいと促すと、荒い呼吸を抑え、会議の始まりを告げた。

「──最近、過激派の攘夷派が増えてる。温厚派になった桂が影響しているらしい」

「…桂は過激派の鎮静剤みたいなものだったからな、無闇に人殺しなんて出来なかったわけだ」

「──人殺し?」

土方、近藤さん、俺の順でそう話していけば自然と部屋がざわめき始めた。
俺の問に土方が淡々と答えていく。

「昨日、この町で3人の一般人が何者かに切り捨てられた。──山崎」

「はい。斬られたのは全員天人。調べてみたところ、斬った奴等は以前桂の一味にいた奴等と思われます。
証言では長身の男達で、桝屋から西の方向へ逃亡した模様。」

「西!?あそこはたしか……廃屋がなかったか?」

原田が動揺したようにそう言えば、山崎は首を縦に振った。


「はい。どうやらそこを拠点にしている様です。昨晩偵察に行った処、何人かの浪士が入っていくのを目撃しました」

「じゃあ……」

「──奴等が逃げる前に明日には捕る。今日はそのための会議だ」

土方が山崎に合図すると、山崎は大きな地図と色とりどりの紐を持ってきた。

「それ、何の為に使うんですかィ?」

不思議に思って、紐を指差させばお前は赤だ、と一番隊人数分の紐を渡された。

そしてそれぞれの隊に紐を配り、土方は捕物の際はそれを身に着けておけと告げた。

「今回は敵の数が何時もより多い。昔、隊服はぎ取られてなりすましにあったからな。防止対策だ」

そう言うと土方は黒の紐を腕に結んだ。こんな感じにしろと皆に確認をとらせる。

「…こんなもん。俺には必要ねーでさぁ」

「いいからつけろ」

「俺が服はぎ取られる程、弱いと思いやすかィ?」

ふんと鼻を鳴らし、そう云えば土方は唸り、眉間に皺を寄せた。

「そうは思わないが……念の為だ。いいな」

「ふん、精々明日の俺の活躍見て、こんなこと無駄だったと思いなせぇ。──一応付けといてやりまさー」

「お前な……」

土方は呆れた様に溜め息を吐き、ぐりぐりと俺の頭に拳骨を加えてきた。

「大層な自信だが……決して自惚れ過ぎるなよ総悟。油断が生まれる。」

「……へーへー。んで、今回の作戦はどんな感じなんでぃ?」







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