もしもの話。
俺が死んだらアイツは少しでも悲しんでくれるだろうか?
if...
「心中自殺だって。世も末ですねえ」
ガサガサと音をたてながら、沖田はかさ張る新聞紙を開いた。
一面を飾っているのは若い男女2人の心中自殺記事。
「愛してる奴となら本望なんだろ」
土方はいつもの私服で身を纏いながら、ふぅと溜息まじりに煙を吐き出す。非番のため、特にすることも無くただ縁側でごろりと寝そべっていた。
そんな彼の姿を見て、少し銀時に似てると思ってしまうのはそれだけ思いを寄せているからであって。
「もしかしたら無理心中の疑いも、だって。だったらそんなの本望でも何でもないですねぃ」
「片方は、な。もう一方はただ迷惑なだけだろうが、もう片方は本望だろ」
「随分とまあ、肩を持ちやすね。もしかして心中か自殺願望でもあんですかぃ?」
からかうようにそう言えば、土方は眉間に深い皺を作った。
それを見てカラカラと笑う彼に、土方は胸が締め付けられる。沖田は自分の隣りにいることが当たり前だと思っていた。そう、銀時が現われるまでは。
そしてこの笑顔。
この間たまたま見てしまった沖田の銀時を見つめる表情は、とても優しく微笑んでいて。そんな顔、今までミツバの前でしかしなかったというのに。
「……お前となら死んでもいいけど?」
彼を見るでもなく、ただ遠くを見つめた侭そう呟いた。返ってきたのは予想通りの言葉。
「アンタなんかとなんて絶対御免でさぁ」
「そーかよ」
「……でも、」
沖田はためらう様に余白をあけ、一度唇を固く結ぶ。そしてゆっくりと口を開いた。
「でも、旦那ならアンタと一緒に死んでくれると思いやすぜ」
悔しいくせに。
哀しいくせに。
「…馬鹿言うな」
「だって本当にそうしてくれそうだから言ってんでさぁ。どうでぃ?一発死んでみるっつーのも」
(そんな顔してたんじゃあ、冗談にすらならねえ、よ)
自分で自分を追い詰めて傷つけて。
そして最後には何も残りゃしないのに。
「それじゃあお前は万事屋と無理心中でもしたらどうだ」
「……死ねよ」
それでも、僕らは傷つけ合うことを止めることは出来ない。
end.
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前の拍手SS「ただひたすらに」の続編みたいなもの。相変わらず救い様のないシリアス。