ザアザアと降り頻る雨の中、それに便乗して鳴り響く足音。
「っ……後で電話するって言っただろーが」
万事屋の玄関の前で座り込んでる俺をみて、何とも言い表せない顔をする。
「……まぁ、いいじゃないですかィ」
どうしても急に旦那に逢いたくなって。でも電話してみたら丁度仕事に行く所で。
だから、仕方がなく。
「…神楽達は?」
「中にいるみたいですぜ。俺には気付いてないようだけど」
「せめて…中に入ってれば良かったのに」
「そんなことしたらバレちゃうでしょう?」
「──だからってそんなに濡れてまで居ることねぇだろ!!」
勢いの強い風は雨をも巻込み、横に吹き付けてくるから、致し方なく俺はびしょ濡れ。
傘持ってくれば良かったのだが、衝動に身を任せ出てきたからそんな余裕も無かった。
「……今日は、もう帰りやす。見れただけでじゅーぶん」
仕事で疲れてるだろうし……。
そう思い、重たい腰をあげカンカンと階段を降りて行く。
「──っ待てよ!!」
「っ……」
不意に後ろから抱き締められ、きゅうッと胸が締め付けられる。
「帰ること、ないでしょ……
「旦那、…バレちまいます」
「……」
「離し……「バレても構わないよ」
そう言って抱き締める腕の力を強められた。
「な、何言って…」
「俺は、沖田君ならバレても構わないっていつも思ってる」
けたたましい音をたて、僕らを打ち付ける雨は嗚呼なんて無粋。
「っ…そんなの」
そんなの、
とっくに。
「俺だってそう思ってまさァっ……」
もう周りなんて構わない。振り返りお互い強く抱擁し合った。
──明日、
晴れたら。
手を繋いで何処かへ行きましょうか。
end.