「探せ」

銀時がいなくなった。戦場にいた筈なのにまるで煙の様に消えてしまった。
死体も見つからず、逃亡したのだと桂と俺は静かに悟る。

「何てことだ……坂本に続き銀時までっ…」

誰が予想できただろうか。あの白夜叉がいなくなるなど。皆の希望だったアイツが。


そして、忘れたのか銀時……お前が忘れる筈ないよなあ?

「ヅラ……総隊で探し出すぞ、いいな」

「なっ…馬鹿を言うな!今総隊を動かしてみろ!!ここの陣は誰が守るのだっ!!人手が足りなかろう!」

「俺が、守る。数人鬼兵隊の隊員を残し、残りの隊全て銀時捜索に駆り出せ」

「……できん、無理だ。無茶を言うな」

桂の漆黒の髪がフワリと揺れ、桂は俺に背を向けた。
諦めた素振りに苛立ちを感じ、肩を掴んで無理矢理こちらを向かせる。


「探せ、探すんだ!探し出して……」

「高杉、」

肩を掴んでる手に自然と力が入る。桂は顔を歪めつつも、曇りのない双眸で真直ぐ俺を見た。

「探し出して、どうする。今までそうしてきたように、逃げ出した者にしてきたように……銀時も、殺すのか」

――俺は間違っちゃいない。逃げる奴等の方が間違ってるんだ。
何故逃げる?

戦争が怖いか?
復讐が怖いか?
それとも、俺が
……怖いのか?


「殺すのか、高杉」


ああ、誰だって何度だって殺してきたさ。
そして俺の心に傷が出来る。先生を一生忘れられない傷が、残る。それでいいんだ。
俺が覚えてあげなくて、他の誰が覚えていてくれる?

先生の為に負った傷ならそれすらも愛しい。

「……自分自身を見失わないでくれ、仲間の血で手を染めるな」

「許せねぇんだよ……ヅラァ。銀時は逃げた。先生から逃げたんだぞ」

「そうと決まった訳ではないかもしれんだろう」

一瞬、桂の目に不安が滲む。しかしそれはすぐに消え、肩を掴んでいる俺の手を振り払った。

「作戦を考え直そう。このままじゃ確実に負けてしまう」

「………だ」

「高杉……?」


じわり、赤黒い感情が滲み出る。

「探し出さねぇと駄目だ、探し出して」

なあ、銀時。
先生と俺らとの約束忘れる筈ねぇもんな?


「――殺してやる」


先生から逃げることは許さない。
そして、俺から逃げることも。




END.



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