某マンション、最上階。隠れ家のひとつの部屋で臨也は窓から下を眺めていた。

「なんでわざわざ肺を汚すんだろうね、馬鹿らしい」

一気に肺に吸い込んで、煙を口から吐き出す。言葉と裏腹な行為に呆れつつ俺もタバコを手に取り吸おうとした。

だが、即座にそれは取り上げられごみ箱に捨てられる。
あぁ、なんだってんだちくしょう。びきりと青筋が浮かぶ。

「別に怒っても構わないよ、それが正解だ。君の所有物を捨てたんだからね。けどこの部屋の所有権は俺、ってことは覚えといて」
「手前は吸ってるくせに」
「シズちゃんの匂いが残るの、嫌なんだよねぇ」

そういってタバコを口に啣える臨也の唇につい目がいってしまう。正直エロい。触りたい。俺の唇でめちゃくちゃにしてやりたい。

「で、やっぱり新羅に見て貰うことにしたよ」
「はぁ?誰をだよ」
「シズちゃん以外にいないだろ。頭がおかしくなったとしか思えない……あんな街中でさぁ、殴るかと思えば」
「キスしたこと怒ってんのか」

――いつもの調子で喧嘩が始まると思っていた。臨也も周りも俺さえも。

けど、珍しく掴まえられた腕があまりに細くて。近くにきた顔が綺麗で。衝動が抑えられなくなって気づけば街中、白昼堂々と唇を合わせてしまっていた。



臨也は俺の問いに顔を赤くし、苛立つようにため息をつく。

「もう少しで来るから。早いとこもとに戻ってよ。じゃなきゃ君を連れてきた意味がない」
「新羅に診て貰っても、治るもんじゃねえよ」

距離を取ろうとする臨也の手首を掴み、引き寄せる。バランスを崩した体を支えるように抱きしめた。

「な、……」
「臨也、好きだ」

何の臆面もなく言い放てば、腕の中の臨也が唾を飲み込んだ。

「俺は嫌い、シズちゃんのこと嫌いだ」
「じゃあもっと全力で拒めよ。俺の理性が保ってる間に」
「ばかじゃないの……キモいよ、触んな。ていうか逃げたくてもできないって……」

その通りだ。逃がすつもりなんてない。いっそう体を密着させたら、臨也のタバコの香りが鼻を掠めた。

「なあ、手前はどうしてタバコ吸うんだ。嫌いなんだろ」
「好ましくはないね。メリットなんてないし」

じゃあ、なんで。
そう耳元で囁けば臨也はぴくりと肩を震わせ、悔しそうな声を搾り出すように発した。

「依存、してるからだよ」

それが俺への気持ちの答えなんじゃないのか。今どんな顔をしてるか自分じゃ確認できない。けど、臨也の心底屈辱を味わったような表情でなんとなく想像がついた。

そう、きっと馬鹿みたいに笑ってる。






END.

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