ラブレターを破いた日から数日後。臨也は信じられない光景を朝から見ることになった。
(マジで……)
思わず携帯のカメラを起動。消音にして何枚か激写をする。

「せっかくの爽やかな朝がだいなしだよ。昨日の夜からやり直したい。とりあえずシズちゃんの上に偶然隕石落下しろ」

一人の女子が落としたキーホルダーをたまたま静雄が拾い、声をかけて呼び止める。それを好都合か運命かどう思ったかは任せるが女子は静雄を留まらせ嬉しそうに会話をしていた。

そこに運悪く遭遇した次第である。しかもその女子とは、正真正銘ラブレターの差出人。
ベタに電柱の影に隠れながら臨也は複雑な心境だった。

「なにしてんの」
「!?」

背後からの囁きに臨也は驚いた猫のように跳ね上がる。見越したように新羅は叫び声をあげるはずだった口を手で覆った。

「君が焦る様子はいつみてもおもしろい。で、朝から人間観察なんてよく飽きないものだ」

臨也は目の前の男を恨めしそうにジトッと見つめ、先程携帯に納めた写真を見せた。
新羅はそれを興味深そうに眺めたあと、だからなんだと言う表情をしてみせる。
「んん、んんうっ!!」

そうしたら心外そうに何か喋りだしたのでやっと口許の手を離した。

「シズちゃんなんか宇宙人に攫われて内臓を食べられちゃえばいいよ!!」
「気持ち悪っ!」
「だって地球外生物じゃないとあいつは絶対殺せないし、かといって打撃系じゃ傷つかないだろうから内臓を攻めてもらわなきゃ困るんだよ!」
「セルティが聞いたら泣いて縋り付いてきそうな話だね……」

臨也本人としてはもっと違うことを発言するつもりだった。この写真をネットに流してみる?とかいつかの弱みに使いたい。とかそれはもういろいろ感じ悪い台詞が山ほどだったのだ。

けれど落ち着こうとしようとすればするほど彼の頭はぐちゃぐちゃになり。結局回り回って1番素直な言葉が口をでた。

「ていうかなんで俺が隠れなきゃいけない訳!」
「ああもう、落ち着いて!そんな大きい声で喋ったら――」

静雄に見つかる!そう思って前方を確認した新羅だったが、いつのまにか遠くにいっていた。それをそのまま臨也に伝えると勢いよく電柱の影から飛び出した。

そして両手を顔の横に立てて、「シズちゃーーん!お願いだから死んでーーっ!!!」と叫んだ。すると数秒後、轟音をたてながら標識を持った静雄が戻ってくるのが見えた。

「君!どんな自殺行為!?ねえ、ちょっと臨也??」
「フフフ……」

迫りくる猛威の前に、恍惚とした表情を浮かべる臨也を新羅は一生忘れないだろうな…と思いながら見つめるのだった。








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