「いやぁ、なんか緊張しますね、局長!」


遊郭へ向かう車の中、沖田の不安を余所に山崎ははしゃいでいた。

今夜は思い切り楽しみましょうね!と満天の笑みを沖田相手にも向けるほどだ。


「しかし、俺にはお妙さんという人が……」
「たかが遊郭だろ。んな緊張することねぇよ、近藤さん」


その言葉に何か引っ掛かった。


(土方さんは行き慣れてそうですね)
そう言いたいのをグッと堪える。


「土方さんはさぞやもてるんでしょうね!」

隊員の原田がガハハと笑いながら土方を野次った。


「そうでもねぇよ。少し黙ってろ」


車の窓を開けてフーっと灰煙を吐き出す。


「えーっ!副長、昔行った時はモテまくってたじゃないですか」


山崎がニマニマと苛つく笑顔で土方さんの方を向く。
それに便乗してヒューヒューと周りが野次を飛ばす。
苛ついた沖田は思わずいつもより低音な声色で脅した。


「お前ら酒でも入ってんのか、流石にウゼェでさぁ」


(胸糞悪い。
何だってんだコノヤロー)


シン…と車内が静まり返る。


後ろの方で山崎と原田が『え??な、何、俺らなんかマズッた?』と狼狽えるがそれを一瞥し、口をツンと尖らせて黙りこくった。そんな態度にバツが悪そうな顔をした土方がグイッと沖田の腕を掴み、無理矢理沖田の顔をこちらに向かせる。


「なんでぃ」


底光りする鋭い眼が土方を捉えて離さない。


「そういう言い方はねえだろ総悟」


沖田と土方の間に座っている近藤は只オロオロしている。


「…うるせぇ。離せよ、ウゼェんでさぁ」


(胸にまるで霧がかかっているみたいだ。
気持ち悪くてしょうがねえ)


「お前、何怒ってー……」


そう言った瞬間、車は勢いよく止まった。
無防備だった沖田はブレーキの反動で前のシートに頭をぶつける。


「痛ェ…」


ぶつけた箇所をスリスリと撫でながら土方を見てみると腹立つことにノーダメージ。
澄した顔で煙草を吸っている。


「着いたみたいですね」


山崎はそう言うと先に車を降りて皆を降ろしてから最後にドアを閉めていた。
相変わらず地味な仕事しやがるぜジミー、と沖田は山崎の肩を軽く叩く。


「眩しすぎる」


ふと、目の前にある建物を見上げれば、お妙のいるキャバクラとは比べ物にならないくらいの大きさで無駄にキラッキラしている。


唖然としているといつの間にか皆は遊郭の中へと足を運んでいた。
そして沖田も急いで後に続く。


入った途端に後悔した。

(…だから嫌だったんでぃ馬鹿ヤロー)


「おいでやす〜っ。今晩はゆっくりしていって下さいな」


見事に別嬪な遊女がゾロゾロと現われた。しかも、大半は土方の周りに集って黄色い声をあげている。







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