「…そうだな、俺らしくねぇ。でも」


(でも……?)


「これが、俺の本音」

離したくない、離れて行かないで欲しい。

自分以外に触れないで、触れさせないで欲しい。


そんな想いでいっぱいだった。


「嫌なんだ、耐えられないんだよ総悟……」

「……?」


「俺以外の誰かがお前に触れるのがっ……」


沖田はカッと眼を見開いた。やはり、銀八は土方に――ばらしてしまったのだと。
絶望に足元を掬われるようだった。


自然と身体が小刻みに震え、抑えきれない嗚咽が零れ落ちる。


涙は――止まらない。

「あ、…お、俺……!違う、ちがっ……」


途端にパニックに襲われ、沖田は必死に弁解をする。
決して自分は進んで銀八に身を委ねた訳ではないと。
無理矢理だったのだと……しかしそれは上手く言葉にならなかった。

「総悟…」


沖田の痛々しい反応に対し、土方は優しく声を掛ける。
だが、それは今の沖田には届いておらず。


「俺はっ…嫌って言った!でも、でも……」

そんなに酷く抱かれた訳でも、身体に傷跡を付けられた訳でもない。
他人からしてみれば、何をそんなに……と思われるかもしれない。

「俺の身体……おかしくてっ…!」


だけど。


「……大丈夫だ、総悟」


だけど俺、苦しくて。

「――何も大丈夫なんかじゃないっ!」


沖田は弾かれたように反応し、勢いよくドアを開けた。
土方は開ける気配に気付いてたのか、数歩下がっていた。


掌を握り締め、まるで子供の様に沖田は泣いた。
ぼろぼろと止め方を知らないかのように…。

「俺はっ……犯されてんのに気持ち悪ィ声出し続けて…身体中にあったアンタの痕も全部消されてっ…!――汚れてしまったんでさぁ……何も大丈夫なんかじゃないでしょう?嘘つかないで下せぇっ」

そう、全てが汚れてる。けど土方は分かってくれた。
でも……嘘に聞こえてしまう。銀八の言葉が頭の奥底にへばり付いて取れなかった。


「偽善者でさぁ、土方さん。アンタは俺を見て汚れてるとは思わないのかィ?……」


土方はそっと沖田に近寄り、蜂蜜色の髪をふわりと撫でた。


「思う筈、ねえ」


涙を優しく拭い、不意に土方は沖田を抱き締めた。






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