聞き違いかと思った、冗談だと思った。
――だけど銀八の顔は真剣で。
「何だって……?」
聞き返したら違う言葉であってくれ、どうか、どうか自分の聞き違いであるように。
しかし返ってきたのは残酷すぎる言葉だった。
「昨日、沖田を抱いたっつってんの。……可愛かったぜ?アンアン啼いちゃって」
ぐらりと目眩がした。いっその事、倒れてしまいたいと思った。
「……嘘、ついてんじゃねえぞ」
「嘘じゃねえよ。何なら本人に聞いてみたら?……言わないと思うけどね」
ふと、土方の脳裏に今朝の銀八と沖田が思い浮かぶ。
なぜか銀八は座り込んでいて、沖田はやけに動揺していた。
(…なんで動揺した?)
――俺 に 見 ら れ た か ら ?――
土方は激しい吐き気に襲われた。動悸が治まらない。
「……い〜っぱい痕付けちゃったし。てゆうか、沖田くんって、超淫乱だよね」
その言葉に土方はカッと瞳孔を見開き、
あっという間に銀八をベッドに押し倒した。
「っざけんな!!」
「…手ぇ、離せよ。締め殺す気?」
銀八の襟元を掴んでいた土方は、より一層力を込めた。
「ちょ…人の話聞いてんのか」
げふ、と咳払いをし、銀八は土方の手から逃れようとするが、土方がそうはさせなかった。
「……殺されたくねぇなら答えろよ。お前が…、無理矢理したんだよな?」
震える声でそう言った土方に銀八は、あぁ、こいつは怯えている、と思った。
恋人が、沖田が、自分から離れていくのが怖いのだ。
いくら強がっていても、土方の瞳は動揺と怯えと怒りでふるりと震えていた。
「…さあね。どっちだと思う?」
「――答えろ」
ギリッ……と容赦なく土方は銀八の首元を締め付ける。
(っ……マジで、ヤバいかも…)
――銀八は、軽い気持ちで沖田に手を出した訳ではなかった。
破天荒で、しかし時には甘く蕩けるように微笑む沖田にいつしか銀八は惹かれ、恋情を抱くようになっていた。
まさかそれが、あのような形で沖田にぶつけるとは思いもしなかったのだが。
「っ……本人に、聞けばいいじゃ、ねぇか」
苦しそうに嘆く銀八の眼は虚ろで、今にも意識を手放しそうだ。
だが、このまま土方にやられたままは悔しいので、最後を覚悟し、わざわざ煽るような言葉を投げつけた。
「それ、とも……聞くのが怖い、わけ?」