思わず沖田は悲鳴を揚げそうになった。


(……後ろを振り向きたくない)


振り向けば、絶対アイツが面白そうに笑っているだろうから。
沖田が微動だにしないと、痺れを切らした銀八は低く掠れた声で小さく囁いた。


「……抱かれに、きたの?沖田…」


ザワザワと身の毛がよだったのを沖田は感じた。全身で、銀八を拒んでいる。


「……くそ教師が。さっさとその汚れに汚れきった手を離しな」


振り向かないまま、沖田は脅すように言った。
しかし、そんな脅しに怯む銀八ではない。


「あれ、そんなこと言っていいの……?」


「……?」


「言っちゃうよ…?土方に……ね」


(―――――っ!!)


沖田は怒りで身体をブルブルと震わせた。
出来うるならば、殺してやりたいと本気で思った。


「……どうしろって…言うんでさぁ……」


消え入りそうな声で独り言のように沖田は言った。


待ってました、とでも言うように銀八はなんの躊躇もなく言い捨てた。


「抱かれりゃ、いいんだよ」


「……しね」


声が震えていた。
動揺を隠す術を沖田は見つけられなかった。

「大丈夫だって、優しく優しーくしてやっから」


(そんな問題じゃないっ……!!)


「っ……その子は、どうするんでィ」


沖田は、ベッドの上で憐れもない姿で寝そべっている女子を指差した。


(俺が遊びなら、その子は本命じゃないのかよ……)


銀八は先程まで抱いていた女を一瞥し、冷ややかな眼をその子に向け、吐き捨てた。


「…今日は、もうお前に勃たねーわ。萎えたからどっか行っていいよ」


(なっ……!!)


その非情な言葉に沖田は驚愕した。
人をなんだと思ってるんだ、と沖田は銀八を軽蔑した。


女は瞳に涙を溜め、急いで服を着て、バタバタと保健室を出ていった。


何事もなかったかのように、煙草を咥えた銀八の胸倉を沖田は掴み揚げた。


「アンタはっ……!なんてこと言うんでィっ!!」


「…何、んな怒ってんの?」


へらりと笑う銀八を、沖田は鋭く睨み付けた。


「最低でィ……あの子はアンタの何なでさァ、恋人じゃねぇのかよ」


暫く銀八は考えこんで、またへらりと笑った。


「…セックスフレンドかな」


「――下衆が」


(じゃあ、なんであの子は泣いてたんでさァ……)


「そりゃどうも…っと」


胸倉を掴んでいた手首を掴まれ、あっ!と思った瞬間にはベッドに引き吊り込まれていた。

さらりとしたシーツの感触にギクリとする。

「……俺が訴えればいい話でィ」


「別にいいけど、それって土方も知っちゃうよね……?」


「……土方さんはっ……話せば分かってくれまさァっ…」

 





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