「俺はっ……アンタのことが好きなんでさァっ……!」
――もうすべて吐き出してしまおうと沖田は思った。
土方の言葉を受け付けないよう、次々と今までの心情を語る。
「他の女とか山崎に抱き付かれてもアンタは嫌じゃないんでしょう!?俺、知ってまさァ、あの晩、遊女と寝たんだろィ!!?」
沖田の言葉に土方は眼を丸くさせた。
そんなことした覚え、1ミリもない。
しかも土方も沖田と同じことを考えていた。
口を開けて呆然としている土方を見て、沖田はさらに話し続ける。
「俺は…アンタに……土方さんに夢中で。なのに土方さんは全然俺のこと見てくれない。俺なんかどうでもいいと思ってまさァっ…」
静かにポロポロと涙を流しながら、沖田は自己嫌悪した。
(――格好悪ィ……最高に格好悪ィでさァ)
それでももう止まらなくて。
「仕事以外で関わらないってアンタは言った。……でも俺はっ…」
沖田は別に憎くてあんな言葉言ったんじゃなかった。
ただ、必死になって自分をつなぎ止めて欲しかった。
「――もう、いい」
震えた声で土方が言った。
いつもより少し低い声に沖田はびくりとした。
「ーーっ!そうやってまた俺から逃げるんですかィ!?」
今度は沖田が土方をジッと見つめた。
土方は視線を逸らしはしなかった。
「もう、充分だ総悟」
優しくそう言うと、土方は沖田を抱き締めた。
息ができなくなるくらい、キツく、キツく。
「苦し……土方さ…」
「……悪かった」
「え……?」
一瞬、沖田はギクリとした。
何に対しての謝罪だか分からなかったからだ。
「…勘違い、してた。お前を疑ったんだ」
「何言って……?」
「お前がもしかしたら遊女とヤったのかと思った。急にいなくなるから探したのに、いなかったから。帰ってきてからの様子も変だったし」
はあ…と土方が溜め息をついた。
先程の沖田の言葉を聞く限りお互い勘違いしていたことに気付く。
沖田の顔がみるみる青ざめた。
「……土方さん、遊郭で本当に何もなかった?」
「始めからそんなこと俺は一言も言ってねぇ」
沖田はなんとも言い様がない表情を浮かべた。
自分の只の勘違いに苦笑したい気分でもあったが、思い切り声をあげて泣きたい気分でもあった。
そんな沖田を見て、土方がクスリと笑う。
「それにしても……傷ついたぜ?」
遊郭での拒否から始まり、屯所での拒否、巡回の拒否。
そして朝の食事での拒否。
いくら鬼の副長と恐れられる土方でもあれは傷ついた。
「……元々、アンタが悪ィんだろィ、色ボケ侍が」
沖田は素直に謝るのも癪なので毒づく。
ハタからみれば、またケンカしそうな雰囲気だが、沖田にとってはこれが仲直りの合図だった。
「なんで俺だよ。始めに拒否ったのはそっちだろ」
再び、ゆっくりと沖田をベッドへ押し倒す。沖田は抵抗しなかった。
「アンタ馬鹿ですかィ。あんなにベタベタ女と野郎に張り付かれてたら誰でも嫉妬しまさァ」