銀時と店に入って、甘味を食べながらも沖田はずっと土方のことを考えていた。
どうして好きなのに……こんなに苦しまなくちゃいけないのか。
胸を締め付ける想いでいっぱいだった。
「……沖田君、大丈夫?」
あまりにも無言で、無反応のため銀時は思わず話し掛けた。
でもやはり沖田からの返答は無し。
ただずっと下を向き、俯いたままだ。
何がこの子をこんなに悩ませるのだろうか? 銀時はスプーンを咥えながら首を傾げる。
ふと、視線を感じ、硝子ごしに外を見れば、数メートル先で土方がこちらを見ていた。
「……嗚呼…お前ね」
「――え?」
ポツリと不自由に放った銀時の言葉に違和感を感じ、沖田は顔を上げる。
険しい表情の銀時が見つめる先には、土方がいた。
「――土方さ……」
銀時がいるのにも関わらず激しく動揺してしまう。
土方は一度、こちらを見たかと思えばすぐに何処かへ消えていった。
「――沖田君?」
「……。」
口に手を当てて、小さく震える沖田を見て、銀時は土方を妬ましく思った。
こんなになるほど……"愛されている"
土方が。
眼を赤くし、必死につらさを堪える沖田を見て、銀時は何かを耐えられなくなった。
グイッと沖田の腕を掴み、唇を合わせようとしたその時だった。
――右頬に鋭い衝撃。
「――ッ!何してんだテメェッ!!」
息を荒げた土方がそこにはいた。
銀時の襟元を掴み、強引にこちらに向ける。他の客の悲鳴など、耳に入っていなかった。
「痛……。何すんの多串君…」
銀時は指で口許の血を拭い、しれっとした顔で土方を見た。
「ひ、土方さん!やめて下せえ!!」
沖田は別に何もされていないのに、銀時に殴りかかった土方の行動が理解できなかった。
「―――っ行くぞ、総悟」
「ちょっ……」
土方は強引に沖田の手を掴み、店の外へと連れ出した。
独り店に残された銀時は、暫く放心していた。
なぜ自分があんなことをしたのかよく分からない。
只、キスしたい衝動に駆られたことだけは確かだった。
(気づかねー方がいいんだろうな、この気持ちは)
止どめなく溢れだすこの感情の名前はきっと……。
「……甘ェ」
口にいれたパフェは甘かったが、少し鉄の味がした。