妄想とか設定メモとか/更新と日記

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「これ、やる」
「?」
「手貸して」
「??」
「…手袋してるとやりづらいな」

首を傾げるアリーチェ。俺は手袋を外し、彼女の白く細い指にするり、と指輪をはめた。

「…指輪?ありがとう、あなたとお揃いなのね」
「ん、まだ安いやつしか買えないけど」

俺には手があるはずなのに、そこに見えているのは、他人にとってはただの空間でしかない。他人には見えない俺の手にも、彼女と「お揃い」の指輪が浮かんでいた。
俺の手がここにあるのだという主張になってくれるのかと思った。かえって不気味か。手袋をはめながらそんなことを考え、俺は自分のことしか考えてない、浅ましい奴だと思い知らされた。

彼女は指輪を見つめ、少し微笑んでいるように見えた。
「そろそろ行きましょうか」
そう言って彼女は俺の手をとった。
「貴方の手は見えなくとも、ちゃんとあるわ」
「…ああ」
「現に私達は今、手を繋いでいるでしょう?」

きっと彼女にはかなわない。そう感じた。

「ありがとう、アリー」
その柔い手を、優しく握りかえした。


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