暗殺 #だけど今日は



俺は、こうして部屋に来る=セックスになってしまっていたのに呆れてたし、ヤッてばかりいる現状が不満だったはずで、セックスなんてしなくてもいいじゃんって、思ってたはずで。浅野くんだって、そう言ってくれると思うのに。

言い合ったり、競い合ったり…そんな関係が丁度いい。俺にとって居心地のいい浅野学秀との関係は、こんなんじゃない。
って、思ってたのに。

気持ちよくなかったのに、浅野くんとのセックスを断らなかったのはなんでだろう。
俺は浅野くんが浅野くんじゃないみたいなのは気に入らなかったはずで。
お互いの理性のタガが外れた状態でしてたって、こころがぜんぜん満たされないのにな。
俺の思い描いてたのって、間違いだったんだろうか。もっと幸せで、満たされるもんだとばかり思ってた。

でも、浅野クンが「シたい」って言ってきたって、断ることはいくらだってできたはずなんだ。それなのに、断れなかった。


もしかして、あんな風に俺だけを見つめて、必死になってる浅野くんを、結構可愛いって、好意的に思ってたんだろうか。
あんなに嫌だったはずのセックスだったけど、たぶん。
へたくそで、気持ち良くなくて、でもなんでか、それでも良かった。ううん、…たぶん、それがよかった。あんな風に俺が優位に立ってられたのは、浅野くんが下手だったからだったんだ。
きもちい場所なんて、知らなきゃ良かった。
怖いくらいに気持ち良くなんか、なりたくない。自分が自分じゃなくなるのは、言いようのない恐怖だった。何より、俺が優位に立ってられなくなっちゃう。

だけどもう、言い訳できない。
だって気持ちいんだよ。頭が真っ白になって、何もかもどうでも良くなっちゃったんだ。
許さないって俺は言ったらしかったけど、そんなこと言った覚えないし、そもそも何を許さないっていうんだろう。こんな、いますぐシたいっていう状態になっちゃうくらいなのに、何を?あんなの、ただ悔しかっただけで、あんな下手だった浅野くんが、急にあんな、うまく…?うまくなったのかな、とにかく、俺がぐずぐずになるようなことしてくるからいけない。あの時浅野くんは、プライドがズタズタなんて言ったけど、こっちからしたら俺の方がプライドもなにも無くなっちゃったんだけど?って感じだし。

だから、次は絶対いつもの感じに戻してやる。

あれ?俺なにがしたいんだろう。不満なはずなのに、こんなにセックスのこと考えてるって、変じゃない?


この1週間があまりに長く感じて、浅野くんとは毎日顔を合わせてるのに、あっちは普通なのに、って。欲しがってるみたいじゃん。浅野くんを拒んだのは俺の方なのに。
正直に言っちゃえば、ここまでくるともう俺はシたくてたまらなくてずっとそわそわしてた。浅野くんは俺が怒ってるとでも思っているんだろうか。部屋に来てもなかなか手を出してこなくて、余計に、こう…。
かといって「シないの?」なんて、言えるわけないし。
なんなの、シたいんじゃないの?俺だけなの?
そんな俺の思い通りにはいかなくて、何と、そのまま勉強になだれ込んでしまった。
てっきり速攻で押し倒されるもんだとばっかり思ってたから、全然やる気が出なくて、ペンをくるくる回しながら、ちらちら浅野くんの方ばっかり気にしちゃって、勉強どころじゃない。
なのに浅野くんってば、テキストの難関問題に夢中みたいで、気づきもしない。
ていうか、こうやって真面目に勉強するの、最近してなかったから、なんか変な気分だ。


「…浅野クン、つまんない」
「つまんない、じゃないだろう。期末も近いんだぞ。学生の本分を忘れたのか。」
よくゆーよ。この間までセックス漬けだったじゃん。って、言いたくても、これじゃ俺が欲求不満みたいだから言えない。
1時間くらいお互い無言でひたすらテキストに向かってて、いい加減俺はイライラしてた。いますぐキスしてセックスしたい。なんなの、俺だけなの?ていうか、なんで手、出してこないの。
「もー、いい。ほんっとつまんない!」
「は?赤羽、何を言ってるんだ、ん?!」
ぐい、っとネクタイを引っ張って噛み付くみたいにキスしてやった。浅野くんはかなり驚いたみたいでジタバタと抵抗するけど、俺だって力は弱くなんかないし、動揺してる浅野くんに負けるわけない。
「ん、んっ、んむ…ぁ…ふ、…っばか、もういい。俺がやる」
「はッあかば、ん、んん!」
ちゅ、じゅ…
聞くに堪えない水音が響いて、急激に室内の温度が上がってく。俺のスイッチも完全にセックスするときのそれに切り替わった。浅野くんはついてこれてないみたいだけど。
何度か舌を絡ませあうキスを俺から仕掛けるうち、浅野くんの表情に焦りが出てきた。でも、俺にそれを気遣う余裕があるわけなくて。
「ンッ、ん、あさのくんッ、あさ、のくんっ」
急に押し倒したりしたもんだから、浅野くんの頭がゴン、といたそうな音を立てて床にぶつかった。心の中で謝る余裕なくそのまま浅野くんのズボンと、きっちり着込んだワイシャツを剥いでいく。均等に筋肉がついた、綺麗な腹筋が露わになって、俺は思わずゴクリと唾を飲んだ。あと、しっかり勃ち上がったそこにも。
そろ…と手を伸ばしてパンツをずり下ろすと、慌てた様子の浅野くんが半身を起こして、抵抗を強めた。なんで?
「なんで。…いや?あさのくん…も、シたいんだってばぁ…いいでしょ?」
「いや、赤羽…今日は……んっ」
「今日はしないなんて、許さない。も、無理だから」
問答無用で露わになったそこに顔を近づけて、優しく扱くと気持ちよさそうな声を上げた。上を見れば、くっ、と眉が寄った顔に浮かぶ切なそうな表情に俺の下半身に熱がこもるのを感じる。
何度か擦るとむくむく大きくなったそこは、汁をこぼし始めて、俺は思わずそれを舐めとった。
「う、…赤羽ッ!そんな、やめろッ、う、ぁ…」
その反応に気を良くした俺は、思い切ってパクリとそれを咥えてみた。顎が目一杯開かれて、結構苦しい。これ、いつも俺の中に入ってるんだよね、って思うとたまらなくなって、もう準備してあった後ろがキュンっと収縮するのを感じた。
なんで準備してるのかっていうと、完全にいつもの癖だった。最初に俺が入れる準備を整えてあげたせいで、浅野くんはそこを解すという作業をほとんどしたことがなかったから、最初の方痛い目を見たのもあって。別にヤる気満々だったわけじゃなくて、もしもヤるとしたら痛いからってだけだから。って、何言い訳してるんだろう。
「も、いいよね…浅野クン」
ズボンを乱暴に脱ぎ捨てて、浅野くんにまたがった俺は、躊躇なく浅野くんのそれを穴にあてがった。
「う…あかばね…ッ、くそ…ッ…!」
俺の中にズプズプ埋めるたび。耐えるようなうめき声を上げる浅野くんが、可愛い。正直、結構きついけど、俺の方が今日は余裕があるみたいだ。ざまあみろ。

「ッア、あはッ、はい、ったぁ…、ん…お、っき…」
自分のいいようにペースを考えて動けるから、これ、いいな。何度か上下に動くうち、浅野くんの腰が揺れてきた。抱きつくみたいに足を背中に絡ませながら腰を動かすと、可愛い声を上げながら、浅野くんも俺をぎゅっと抱きしめてきて。
あ、なんか、これ、いい。
ちゃんとセックスしてるみたいだ。
心がじんわりあったかくなって、じわじわ身体だけじゃない気持ちよさが生まれていく。
「ぁ…、あっ、好き…あさのくん」
!?あ、あかばね…ッあかばね!」
ずんっと、奥を思い切り突かれて、身体がビクンと跳ねた。抱きしめられたまま思い切り突かれるのは結構きつい。けど、なんか。
「あッ、ああっ…!っ!」
すっごくは気持ちよくはないけど、浅野くんが気持ち良かったならいいかも、って熱い飛沫を感じながら、そんな血迷ったことを思った。


「ッは、はぁ、は、」
荒い息を吐きながら、お互いしばらく抱き合っていたんだけど、浅野くんが「はぁー」と大きなため息を吐いて俺に寄りかかって、「僕の我慢が全部水の泡だ……」なんていうから、思わず笑ってしまった。
「なにそれ、もしかして前のアレ、気にしてたの?」
ほんのり頬を赤らめた浅野くんが、拗ねたように、
「そりゃ気にするだろう。君、かなり機嫌を悪くしてたしね。」
なんて、見当違いのことをいうから、俺はいよいよ本当に腹を抱えて笑ってしまった。
「生徒会長サマがそんなこと言うなんて、明日は槍が降るね」
「うるさいな。…僕だって恋人は大事にするんだよ」
「はぁ浅野クンがそんなかわいいこと言うなんて、どうしちゃったの」
よしよしと頭を撫でたら嫌そうに振り払われた。


そんな感じで、俺はかなり満足したんだけど、浅野クンはそうじゃなかったみたいで、俺は冷や汗を掻くことになった。
「今度は君を気持ちよくしてあげるよ」
「え」
「前みたいにね」
「ええ…」
これは、もしかして、俺、ピンチなのでは。




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