暗殺 #反論もできなくて



そんなこともあって、俺は浅野くんとするセックスがちょっと嫌いだった。でも、「シたい」って(俺から見たら)可愛く言われると、応えたくなるんだよ。不思議だね。
何度も繰り返すうちに俺の受け身の方が上手くなってしまった。自分が気持ちよくなる方法を探って、時には自分で下を擦ったりもしているから、自慰みたいになっちゃってるけど、悪くない。ただ、なんとなく二人でしてる感じがしないのが不満だった。


シてる最中、初めての時に俺が探り当ててしまった、あの場所だけは当たらないよう当たらないようにってしてた。一度もそこに浅野くんが触れたことはなかったから、俺は少しずついつもの余裕を取り戻していって、最中も余裕で浅野くんに言葉責めしたりできるようになっていた。
だけど、浅野くんに面と向かって「下手」とか「痛い」とかは思ってても言えなかった。
だんだん技術も向上してるし、何より最近は浅野くんも理性を保ちながらシてることが多くて、そんな中、望まない形で心を折る結果になりそうで。まあ、この状況が苦じゃない程度には気持ちくなってきたからいいか、とかいう気持ちもあったけど。イクときだってあるくらいだったし。もちろん俺の努力の賜物だけどね?
だから、結構油断というか、リラックスした状態でセックスをしてて。
浅野くんが指をナカに入れてほぐしているときも、相当力を抜いて、ともすればそのまま寝そうなくらいだったのに、突然不意を突かれたことに、俺の体は大げさなくらいに跳ね上がった。
「ん?!ぁ、あぇっ…?」
トントンとそこを突いた浅野くんの指から逃げるように腰が引けた。未だビリビリ身体中を駆け回ってる不思議な感覚に、俺は何が何だかわからなくなって、浅野くんの腕にすがってとりあえず痛いふりをした。
「赤羽…?」
「や、そこ、ダメ、いた、いから、やめて、浅野くん」
「…痛かったのか、すまない」
俺の望み通りに浅野くんが勘違いしたおかげでそこを避けてくれるようになったし、入れてるときにそこに押し当てることはなかったから、その日のセックスはなんとか自分を保ってられたんだと思う。

そのあと調べたんだけど、男の人にはお尻で気持ちよくなる場所があって、多分俺が最初にした時見つけてしまったのはそこなんだろう。
浅野くんにばれたら本当にまずい。ここ最近の俺の態度が崩れたら、きっと仕返ししてくるに決まってるし、今までのセックスと違いすぎて色々問題を生む気がする。浅野くんが下手なの、わかっちゃうじゃん。
絶対避けたい。絶対にバレないようにしなきゃ。


そんな俺の願いは、割とあっさり打ちのめされた。
さすがに下半身は正直で、またしてもそこを責めてきた時に、アガってしまった声と、ビクビク震えながら泣くそこで、バレてしまった。
そのあとはもう、ホント、めちゃくちゃにされた。一回覚えたら忘れないみたいで、何回も何回もそこばっかり押してくるし、前に痛がったことが嘘だっていうのも見抜かれて、つまりは演技してたこともバレて。
いやいやとかぶりを振って抵抗する俺を無視しやがった浅野くんは、俺が泣きながら「入れないで」って言っても聞いてくれなかった。
めりめりと引き裂かれるような感覚は変わらないのに、浅野くんは器用にそこばっかり狙ってくる。
「んっ、んん…あさのくん…だめ、って、言ったじゃん…ッそこ、ばっか、ひどい!あんなッ、下手くそだったくせに!ばか!へたくそ!生意気!も、や、強くしないで、ってばぁ!」
もう取り繕うこともできなくなって、ゲシゲシと浅野くんを蹴ろうとするのに、うまくいかない。
浅野くんが怒りそうな単語を使わないように使わないように、っていう俺のいじらしい努力は全部水の泡になった。浅野くんの眉間にそれはそれはふかいシワがよって、そのあと綺麗すぎる笑顔を浮かべてくるもんだから、俺はたらりと冷や汗をかいた。
「んぁ…ヤぁ…!つよ、いぃ…だ、め…も、ッいく、からぁ…!ああああぁっ」
ギリギリのところで保っていた理性のタガが外れて、大声を出してしまった。くたりと体から力が抜けて、それなのに浅野くんがガツガツ穿ってくるから、痛いくらいの快感についていけなくなってきて、ぐずぐず泣いて「やめて」と呂律が回らなくなってる口で必死に懇願した。
「今まで、悪かったね、赤羽ッ。きょう、は、しっかり気持ちよくしてあげる、よ」
もう、顔が見えない。許さない。浅野くんなんか嫌いだ。絶対許さない。
「あっ、あ、あ!ゆるさ、ないんだから、ね………」
あ、浅野くんまたゴム忘れてるし。さいあく。



「浅野くんってさ、理性が飛ぶとほんっと自分勝手にもほどがあるよね。いつも自分勝手だけど3割増し。サイッテー」
終わった後、俺は体がピクリとも動かなくなってて、事後処理を全部浅野くんにやらせたら懲りずにまた手を出してきて、「猿かよ」って言ってやった。
ホントやだ。自分じゃなくなったみたいな自分を見られたことも恥ずかしいし。
「君の方がひどいだろう?僕のプライドはズタボロなんだよ。慰めてくれてもいいんじゃないかい?」
「お断りだよ。もう絶対ヤダ。しない。しないから」

というわけで、1週間セックス禁止令を出してやった。




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