暗殺 #反論さえ呑み込んで



超優等生の浅野くんは何でも知っているとばかり思ってた俺は、それがとんだ勘違いだと、身をもって知る羽目になった。
浅野くんとそういった関係になったのは大した理由があるわけでもなく、ただ煽りあってこんなことになったような気がしてる。いや、付き合ってるんだから、当然の流れだったのかもしれないけど、俺としてはそれはなんだか違う気がして。喧嘩の延長なくらいが丁度いい。いろんな言い合いができるのが楽しいし、セックスするために付き合ったんじゃないから。
そう、そういうことがしたくて浅野クンと付き合ってるわけじゃなかったからさ。でも、浅野くんがしたいっていうんならシてもいいって、思ってる。

正直俺に男を抱く勇気も覚悟も知識もないから、浅野くんに全部任せることにした。だけども。

「ん…ッた」
歯がゴチンと音を立ててぶつかって、俺は思わず顔をしかめた。そのことに浅野くんは気付かなかったみたいで、そのままめちゃくちゃに舌を絡ませてくる。
「あっ、さの、く、ちょ、んぶ、ッぁ、」
息がしづらい、のはいいんだけど、絡ませるというよりは強引にねじ込まれてる感じだから、正直あんまりよくない。や、口内を好き勝手に舐られて、感じなかったわけでもないんだけど、ね。
「ッなんだ、赤羽」
不安がってはいないまっすぐな目に、違和感を覚えたのは確かだったんだけど、
「んん、なんでもない」
と、嘘をついた。

ここで、俺は選択ミスを犯してしまった。
浅野くんのキスはぜんぜんうまくなかった。この時点で俺は察するべきだったということなんだろう。



浅野学秀はセックスが下手だった。

でも、その時の俺は、キスが下手なのはきっと緊張しているせいなんだな、かわいいじゃん、なんて思ってて、ビッチ先生直伝のテクニックを見せつけるのをやめてあげた。そんなことしちゃったら、多分浅野クンはプライドをズタズタにされて一生手を出してこなくなる…わけないか。めっちゃ勉強して逆襲されそう。
…やりかえしてやればよかった。
まあだけどお互いが興奮したこんな状況で止められても困るしね。

なんども下手すぎるキスを仕掛けてきて、全っ然慣れてくれない浅野くんに、ちょびっとイライラしだした俺は、しびれを切らして浅野くんの股間に手を伸ばした。
「あ、さの…くッ、も、いいからぁ…!」
そこを確かめるように握りこんだ俺は、そこがあまりに固く、熱くてびっくりした。
う、わぁ…
ガチガチになったそこは小刻みに震えてて、俺は一気に顔が熱くなった。恥ずかしくて顔を覆ってみたけど、それを許す浅野くんじゃなくて。
「ッ隠すな、赤羽」
必死な表情と手に残る熱い感触が俺を燻らせて、どうしようもなくさせる。
こういう時、普段の俺ならムッとして「うるさいよド下手くそ」とか言い出しそうなもんなのに、言いたいはずなのに、言葉が音にならない。俺があれこれ言ってても進まないから仕方がなく腕を外してやった。
「ッほら、そんなの、いいでしょ。…はやく、」
ちゅ、と煽るようにキスを仕掛ける。俺の方がうまいんだぞと暗に言いたかったのもあって、じゅるじゅるそのまま舌を絡ませてやった。浅野くんにしては可愛い声を出しながらそれを必死に受け入れてる。
「んッ、んむ、あか、ばねッ」
どさりと思惑通りに俺を押し倒した浅野くん…それはいいんだけど、押し倒すのまで下手とか、どうリアクションとっていいかわかんないよ。

「ッ、ね、早くってばぁ」
痛いけど、我慢、我慢。みんなと関わったことで我慢を覚えたせいで、酷い目に遭うことになるなんて、この時の俺は想像していなかったんだって、何度でも言うよ。
…思い出したらムカついてきた。浅野くんのバーカ。

ワイシャツが引きちぎれそうなほど強く引っ張るから、ブチっと嫌な音を立てて布がきしむ。さすが浅野くん。力が強い。こんな風に煽りまくったせいで浅野くんの動きが性急なものになっていくのが面白かった。
その勢いを失わないまま下に手を伸ばしてきた浅野くんの愛撫が、力任せの強すぎるものだったらどうしよう、なんて思っていた俺はそんなことなすぎて困ることになった。
やわい、やさしすぎる刺激。そろっと恐る恐る伸ばした手を優しく上下に動かしてきた浅野くんは、自分でしたりしないんだろうか。俺ですらたまにはするっていうのに。
「ん、んっ、あさのくん、もちょっと、つよ、くッ、いった!いた、いってば、」
一転して強く扱かれ、痛すぎて涙でそう。「このばか!」とか言いたくて、でもやっぱり言えなくて、もどかしくて。
「すまないッ」
んで、またゆるい刺激に逆戻り。進まなすぎっしょ…。
いい加減じれったくなって、俺は起き上がって浅野くんを突っぱねた。
焦れてるだけじゃなくて、危惧していることもあったから。
俺だって知識がないって言っても入れる穴くらいは知ってる。このままいくときっと、いや絶対、ものすごく痛い目にあうだろうから、仕方なく自分で準備することにしたんだ。
ちなみに、浅野くんを抱こうっていう気にはこの時、全くなってなかった。そうしてやればよかったのかな?でも多分俺もうまくいかないだろうから、浅野くんに醜態晒さなくて済んだし、これでよかったんだよね?ね?
「ん、んん゛、ん、浅野くん、キス、して」
ぐちぐち生々しい音が響いて、セックスしてるはずなのに俺が俺のためにしてるって思うと、なんか虚しかったから、キスを強請った。浅野くんは下手なりにそれに応えてくれて、気持ちくなくても、その事実が良かった。
抜こうとするたび、生理的に出ちゃう声が抑えられなくて、それは決して気持ちいいからじゃないのに、その声が浅野くんを煽っていくらしい。
浅野くんに何もしてあげれてないのに、浅野くんの息はどんどん荒くなる。あんまりに興奮してるみたいだったから、チラ、と下を見やるとガチガチに勃起してた。こんなの、入るのかな。
そう思うとほぐすのに一層力が入って、グリ、と中をかき回す動きが激しくなる。その瞬間、ビリっと電流を流されたみたいに体が跳ねて、でも、浅野くんは気づいてなかったみたいだったから、怖くなった俺はすっとその場所から指を離して、指を増やした後もそこには触れないようにした。ここ、だめな気がする。

3本の指がたやすく入るようになった頃、浅野くんに目配せをした。
ちょっと反応が鈍いのは多分、興奮しすぎ。もう、ホント、いい加減こんなキャラが崩壊してる浅野くんにも慣れてきたよ。
「あかばね、そろそろ」
こっちを懇願するみたいに(でもまあ、態度はでかいけど)見てる。なにこれかわいい。写メ撮って後で見せてやりたい。
「ふ、いいよッ、浅野クン。あ、ああ、あ゛!」
いった、痛い、痛い!なにこれ痛い!痛すぎ。死ぬんじゃない?ていうか死んだ?俺の体股から裂けるんじゃないの?
「いた、ひぅ…う、あさの、くんっ、やぁ…!動か、ないッで、ねぇってばぁ…!」
多分、この声は浅野くんに届いてないと思う。気を遣う余裕なく抽送をやめない浅野くんが、いつもとまるで違くて。確かに浅野くんの顔をして、浅野くんの声なのになって、イメージから遠すぎて違う人としてるみたいだった。でもこれが浅野くんのセックスなんだと、俺は諦めることにした。
そのまま勝手にイった浅野くんは、俺にのしかかってキスをしてきた。そんな風に甘えるみたいな態度が可愛かったから、とりあえずこっちを気にもしなかった自分勝手さにも、目を瞑ってあげた。

でも、思い通りにいかなかったのと、イケなかったのと、コンドームを付け忘れてナカにブチまかれた精液が生ぬるくて気持ち悪かったのとで、俺の方の機嫌がこれまでにないくらい悪くなったのは言うまでもない。浅野くんは気づいてないみたいだったけど!




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