暗殺 #自分勝手×2





目を覚ますとそこには誰もいなくて。
飛んでしまった記憶は戻ることもなく、ぽっかりと穴を開けたままで、カルマはぼんやりと思考を止め、また布団にくるまった。
「あー…いって…」
何があったのかはわからないけど、浅野が来たんだろうということだけはわかった。
こんな痛みを伴うのは、セックス以外に経験がない。自分が受け入れる側をするのは浅野相手にだけだし。

…浅野とセックスがイコールで結ばれてしまっていることに苦笑いする。
疑うこともなく浅野に抱かれたのだと思う自分にも。

友人でもなく、クラスメイトでもなく、かといって知人というほど薄い関係でもなく、今やライバルと言えるのかも分からない。
いや、最初からどんな関係なのかなんていうのは、名前をつけていなかったし、つけるものでもなかった。
あのときカルマが、うわ言のように繰り返した言葉たちは本心なのかもわからないくらいには、曖昧な感情を浅野に抱いている。
(…浅野との関係が分からない。)
(いや、最初っからわっかんないや)
自分のぬくもりだけが残る布団には、浅野の匂いがふんわりと残っていて、なんだか泣きそうになった。




出先で赤い頭を見つけた。やはりあの髪色は目立って仕方ない。いつだって目については浅野を苛立たせる。
かち合った視線を即座にそらしてそのまま目を合わせようともしないで去ろうとするから、ぐ、と腕を掴んで制止した。
「っ、なんのつもり」
加減せずに掴んだ先の腕が思いの外細いことに驚いた。
赤羽カルマという人間は、暴力沙汰をなんども起こしたと聞いていたし、その現場こそ見てはいないものの被害に遭った輩たちのひどい有様も聞いている。
データは把握していたが実際に触ってみると、なんだ、ただの人間だった。
おそらくは自分よりも軽い身体に、興味が湧いた瞬間だったのかもしれない。
苛立ちの理由もわからずに、また口論となった。そんなつもりじゃなかった。いつだってそうだ。いつも間違えてしまう。そんなつもりはなくて、ただ。


初めてシた時の高揚感は確かに覚えているのに、断片的に残る記憶をかき集めたってきっかけは見つからなかった。
カルマの弱い抵抗に、余計劣情を煽られたこととか、次第にノリ気になっていった様子とか、そんなことばかりが脳内に保管されている。
(なんて、都合がいいんだ)
二度目はないだろうと踏んでいた。だから、カルマが二度目も抵抗しなかったことや自ら行為を求めたことには驚きを隠せなくて、よほど馬鹿な顔をしていたんだろう、赤らんだ顔で説教をくらったりもした。「デリカシーがなさすぎる、」とかなんとか。
赤羽業の、何が気に入ったのかも、赤羽業が、浅野学秀の何を気に入ったのかも、わからない。



だからこそ、
「お前、が、わからない」
なんて、
「すきなんて」
なんて
「好きなやつを」
なんて

勝手なことを言わないでくれ。
僕自身も、君も。
証明してくれはしないんだろう?どこがいい、何がいい、こんなに身勝手な人間の、どこが。
(じゃあ、僕は赤羽のどこがいい?)



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