暗殺 #体は始まる




どういうわけか、浅野学秀と赤羽業は肉体関係にあった。なぜ、と問われても困る。気が付けば、そうなっていた。それだけ。ただ、カルマの解釈では喧嘩の延長戦だったことは確かで、でもなんでそうなったのか、わからない、覚えてなんかない。
ーー押し倒されたとき、いいや、と思ったんだ、っけ?
一度きりの関係だと思った。のに。
トチ狂った頭で、熱に浮いた、ドロドロの視界で見た、浅野の顔が、忘れられなかった。
それだけ、だ。だろう?
基本的には仲は決して良くないライバルのふたりにムードなんてないし、必要もない。険悪な雰囲気が、濃霧に覆われて、頭がおかしくなっては、たまに浅野が噛み付くように口づけるくらいで、ラストスパートというところまではキスも、指を絡めることさえ、しない。別にそれでいい。甘い空気なんて真っ平御免だと、カルマは思っているし、たぶん、浅野もそう。…そうでないと、困る。
ーーなんでかなんて、浮いた頭じゃ、わかんないや。
「やっ、んゃ、ふ、ぅ…ッッッ」
くっ、とカルマが達した瞬間に浅野の眉が歪んで、耐えきれなかった呻きにも似た声が漏れ出た。
−−気持ちよさそう、よかっ、た
カルマはというと、涙で浅野の顔が、よく見えないから、不服で、でもきもちいい。
快楽には勝てなかった。飛び散った自身の精液がどろりと顔にかかって、それすら興奮材料で。
ーー浅野の、いっぱい、
きっと、よだれも垂れて、酷い顔だろう。
ーーだから、なんだよ、何だってんだ…もぉ、いい、きもちぃ…どうでもいい…。
プライドがズタズタになるくらいには無様な姿を晒しているのに、気にもできなかった。
吐精した後の身体は尚一層浮いているし、身体は喧嘩の時なんて目じゃないほど軋んで震えて動かない。
「赤羽、すまない…ッ、抜、くぞ」
辛そうなカルマを見、苦しそうに浅野がいう、その少しあとにズルル…と引き抜かれたそれが、腸液と奴が吐いた液でテラテラ光って、ひくりと喉が鳴る。
イった後だというのに凶器みたいな硬さと大きさのまま、反り返るそれに、唾を飲んだ。
自然と震える身体は、自分の意思に反してぴくりともしない。そんなことより、抜かれたことが、涙で見えないことよりもよっぽど不服だった。
ーーなん、で、やめな、で
その一言が脳内を占めて、肉体的に限界を超えてでも快楽を求める浅ましさよ。
だが、それは浅野とて同じなのだろう。でも、カルマを気遣って、自分だって、その暴力的な欲望を満たすために理性を捨てたがってるのに。
ほら見ろ、カルマが欲に濡れた目で見つめるから、またビクンと反り返るそれが大きくなった。
「あさ、の」
頭は殆ど働いていないけれど。
ーーなんで、優しくすんのさ
こんなの、付き合ってもない、喧嘩の延長戦だろ、これじゃあ、まるで。
それがきっかけとなり、ピシリとヒビが、確かに入ったのだろう。決壊してはいけない何かが、壊れて、
「………っ、」
「赤羽?どうし、」
「も、つらい…っ、いい、」
「なっ…!ど、どうした、赤羽」
狼狽えるお前なんか、見たくなかった。知りたくなかった。知らなければ、こんな、想いは、生まれなかった。
「お、まえと、セックスして、んのに、わからないのが、つらい」
「は…?おい、あかば、−−っ!?」
ぼろ、と雫がこぼれるから、のろのろと腕で顔を覆った。遅いとは分かっていても、ばれてしまうのが怖くて、でも、期待していた。
ーーなんで、するの?
肉体の相性がどんなに良くても、カルマは男で、浅野も男で、それが都合よかったの?
じゃあ、なんでそんな目、するの。やさしく、するの。気遣いなんて、いらなかった。こんな想いは、したくなかった。
「やめてよ…おれ、惨めだ。お前なんか嫌いなのに、…きらい、だったのに、お前はおれのこと、きら、い、っなのに、おれ、だけ」



すきなんて、

瞬間、ぐ、と浅野の自身がカルマの後孔に捻じ込まれた、とカルマが理解するまで、相当な時間がかかったと思う。脳内がとろけて汁が出そうだ。

飛んだ思考が戻ってくる頃には、意識が危うくなっていた。
「あ、アァ、あっ、あさのっ、や、やらぁ…!やめて、やめ、やめ!ん、んんッッ」
過ぎる快楽。こんなのは、暴力と同じだ。カルマの涙がついに感情的になりだした。
でも、浅野はやめてくれない。
やめろ、やめて、こんなの。ううん、これでいいよ。これなら、いいんだってば。好きじゃないのに、優しくしないで。これが、おれたちには、
「あさの、あさ、の、あさのぉ…」
「君はっ!なにも分かっていないのか!その頭はどうしてこんな時に、こんな大事な時に役に立たない?!僕が、君を嫌っているってっ?決めつけも大概してくれっ、僕が嫌いな奴を抱くようなやつに見えるのか…なあ…」
「好きなやつを、大事にしない奴がどこにいるんだ…赤羽…っ」
いっそう、穿つのが、強くなって、浅野が感情を露わにしているなんていうのも、分からなくなる。
ーーは、こいつ、なんて、いってる?なんで、泣い、


そこからの記憶は、ない。



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