暗殺 # My world , goodbye



あれ、どうしてこんなことをしているんだろう?
何度となくその疑問は俺につきまとってきた。こんなの、おかしくない?って、責めるみたいになんども。
殺すべき相手で、教師と生徒で、男同士で。おかしくない?ねえ。って、俺の理性はいつだって正しい。

溺れる魚みたいに、俺のテリトリーとも言える場所で、俺は俺じゃないみたいにうろたえる。
殺さなくちゃいけないんだって、今まで当たり前に思っていたことを、今更。

殺さなきゃ。
俺が殺せんせーを殺す。俺が。絶対に。…きっとそれが、世界のためなんかじゃなくて、殺せんせーの、ためになる。
最後のセックスになるだろう。俺は対せんせー用の武器を隠して、せんせーとセックスをしている。
「ぐ、うぅっ、ひ、うごか、ないで、せんせっ」
苦しい。せんせーとするセックスはもちろん苦しくて痛いのもあるけど、どこか暖かくて、心地いい。ずっと続いてと、気が付いたら。

ねえ、おかしくない?

(うるさい、うるさいうるさい!)

裏側を責められると、どうしようもなく声がアガって、せんせーの顔色がピンクに変わる。
「…っ、キツそうですね。大丈夫ですか?」
あ、
この瞬間が好きだな。今だけは、俺だけ、俺のことだけを考えて、心配して、見て、思ってくれるから。
ズル…と触手がゆっくり抜かれていくのを、俺は必死になって止めた。触手を掴んで、殺せんせーを見つめれば、呆れたようにせんせーは笑って、また突き上げた。
「ひ、ぃんッ!」
ああ、嬉しい、嬉しいよ、せんせー。死んじゃ嫌だ。

ねえ、ねえ。

ノイズが大きくなって、かぶりを振った。何も考えたくない。俺は、殺せんせーのことだけを考えていたい。今だけでも。

…何てことだろう。俺は存外この化け物に固執している。
ツン、と鼻先が痛んで、顔を隠した。泣いてしまったら、終わりだ。

「カルマ君、君は…、」
殺せんせーの顔色が、ほんの数瞬暗くなって、でもすぐ隠すようにピンク色に戻った。

(知ってるよ、せんせー)
殺せんせーは知っている。
俺が今日、今、殺すと決めていること。それなのに、躊躇っていること。…本当にせんせーが、大事だってこと。


でもいいんだ。
俺たちは、

ほんの一瞬だけだ。そもそもこの関係だって。
どうせこの世界だって数ヶ月経てば終わる。
俺にとっての世界は、どっちにしたって終わる。
殺せんせーの命か、俺の命か、両方か。
ただそれだけの違いだ。

そう思うと俺たちが殺せんせーの分までせめて精一杯生きるのが、互いにとって良い気がしてた。

…なのに。
こんなにも苦しいなんて。

「うっ、う〜〜〜せんせぇ…」
俺は、俺は…−−−−。

「ありがとう、カルマ君。」
暖かい触手が俺の涙を拭って、唇に触れた。
(キス、みたいだ)
殺せんせーは、いつも通りだった。余裕の笑みだった。
なんで、どうして、俺は身勝手なだけで。
せんせーのことなんて何にも考えてない。「互いにとって」何て、俺が勝手に思ってるだけのエゴの塊だ。
そんなの、痛いくらいわかってた。

ぐんっとせんせーの触手がうごめいて、俺の中をいきなり犯し始めた。
「ヒ!?せんせ、う、い、ま動かな、で、」
殺せんせーは俺の思考を止めようとしたのかもしれない。
次第に頭に霞がかかって、苦しいんだか、悲しいんだか、嬉しいんだか、なんにもわからなくなって。
涙で霞む俺の視界には、バケモノなんか映ってなくて。
(、ころせ、ない)
俺は、こんなにも大切な『人』を、殺せない。

「ほんとうはね、君くらいの人間なら、行為中に先生を殺す機会なんてたくさんあったはずです。」「でもね。カルマ君。君は優しいから、こんな私を、ね。知っています。」


「う、う、あ、せんせー、死なないで、俺たちを殺さないで、ずっと、一緒にいて…っ、嫌だ、嫌だ−−−っ」

先生の顔にバツマークが浮かび上がった。とても悲しい色をして。あ、−−−−−。


「殺すって、言うのかい?」
「殺すしかないでしょう?実際。ねえ?」

だって俺にはそれしかできないもの。

そうだよ、俺。



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