美L! #さよならフレンド



ピーと無機質な音が響いて、おれはその無情さに、ほんの少しありがたさを感じている。変な高揚感が身体中を巡って、何もしていないのに期待で震えた。
ラブホテルに入るのは初めてだった。もし経験があったとしても、こんな風なかたちで中に入ることは、早々ないだろうけど。
「んん…~~!」
勢いよく覆いかぶさってきた親友が、おれにキスをする。はたから見たら異常な光景だ。
だって、鳴子硫黄は、おれの親友は、男だから。
でも、おれはそれを当たり前のようにして受け入れる。ほんとうは、違うよな、とずっと思ってる。
でも、逆らうことが、どうしてもできずにいる。なんでだろうか、わからない。
舌を絡ませるキスを続けていると、イオの鼻息が荒くなってきた。興奮しているのは、おれだって同じだけど。
…なんということだろう。おれだって立派な異常者だった。
「ぃ、いぉ…っは、ァ…」
昨日の光景がブワっとフラッシュバックされて、思わず欲に濡れた声が漏れた。

昨日、イオの家でおれはヤられた。
濡れた音と喘ぎ声と肌のぶつかり合う音だけが響く高級マンションの一室は、誰に見られるでもなくひっそりと、おれたちを壊していった。
初めてするセックスはおれの脳みそをトロトロに溶かし、イオの頭もおかしくなった。元からかもしれないけど。
そうしておれとイオはセフレに成り下がってしまったんだ。
始まりこそレイプと呼ぶ行為だったのかもしれない。でも、だけど、おれは−。
イオとこんな関係になってしまったっていうのに、喜んでいるんだ。
…もしかしたら、最初からこうなりたかったのかもしれない。

「リュ、ウ」
「ん、いお、きもち?」
レロリと濡れた舌を使ってイオの首筋をなぞった。ビクビク震える体が可愛いと思った。漏れる吐息も。
こんなの、どう考えたって同意の上だ。言い訳はもう考えるのも面倒で、捨ててしまった。
バイだろうがゲイだろうがそうでなかろうが、おれはイオとのセックスに夢中になっていた。それすら些細なことに思えるほど。
しばらくそうしていると、耐えきれなくなったらしいイオがおれを引きずってベッドの方へと歩を進めた。
あ、また、はじまる、
じくじくと腰が疼いた。もうおれは、セックスの虜なんだろう。
乱暴に服を脱いだら、布がぶちっと嫌な音を立てた。思いの外タガが外れているみたいだ。
「勃ってる…」
そろ、と柔く揉みしだくと、これまでにないくらいビクビク震えながら、耐えるように目をつむりながら「ふっ、…ぅ」と噛み締めるような声を上げる。
イオの艶っぽい声がほんの少し浮いた、甲高いものになっていることにも、おれの手でこうなっているってことにも興奮して、じわ、と下半身を濡らしてしまう。
目ざといイオはそれに気づいたらしくて、「可愛いです」なんていいながらおれのを握り込んだ。
かきっこみたいになって、お互いの喘ぎ声と、擦る乾いた音がやっすいホテルの壁に反響して鼓膜を揺らす。昨日は気にする余裕がなくて分からなかったけど、俺は馬鹿でかい喘ぎ声をあげている。
おおよそ自分のものとは思えないそれが、さらなる興奮材料になって、先っぽから汁が溢れ始めている。イオは気持ちよさそうにしながらも、まだ余裕があるようだった。
「ふぁ、ぁん!いお、いおぉ…んふ、んっ、ひもちぃ、うァ!しゅご、いぃ」
いろんな栓が抜けてしまったみたいに、あるいはバカになったみたいに、涙も、声も、よだれも、先走りも、抑えることができなくなる。
もうイオの顔を見ることも、扱くこともできず、ただただバカみたいに甲高い声を上げることしかできずにいた。
「は、ぁあ、んぁっ、ああっ、ア、ッッ ~~~!」
チカチカ視界が眩んで、もうイク、限界だと一層声を大きくしてその瞬間を待っていると、ピタ、と動かしていた手が止まった。
「~~~ぁ、ぇ?いお…なん、で」
イオは余裕を滲ませながら笑って、残酷なことを言い出すのだ。
「まだダメです、っよ」
つぷん、と大した抵抗もなくイオの指を受け入れた穴は、入り込んだ指をきゅう、と期待で締め付けた。
「ぅ、ぁ…、~~~っ、そ、こ、」
また溶かされてしまう。自分が誰だかも、イオがおれにとってなんなのかも、なにもかもわからなくなるくらい溶かされる。
「なに、笑ってるんですっ」
ぐちゃ、ぐちゃぁ…と、聞くに堪えない音が鼓膜を揺らした。冷たい液体が指をねっとりと濡らしている。
だけれど、もうそんなの、関係がないことだ。
きもちい、きもちいい、きもちいい!
どうでもいい、なんでイオがおれを抱くのかとか、なんでこんなことになったのかとか、どうしておれはないているのかとか、なんで、じんわりこころがあったかいのかも、もう、いい。
「い、れて…いお、いお…はや、く」
「いま、自分がどんな顔しているか、わかってますっ?」
『いやらしい』
うつ伏せ状態で腰だけ高く上げられる。期待で脳からみそが垂れそうだ。
ひた、と当てられたそれが、あまりに熱くて、冷や汗がでた。
「い、やらし、くて、いいっからっ!は、やく!」
「りゅう…ぅ、あ」
ズンッと、圧迫感を与えながらおれの中に入り込んだそれは、昨日と同じ、いや、それ以上の熱と、硬度を持っていた。
容赦なく突き上げられると、もう声をあげることもできなくなって、息を詰まらせながら、イった。
「く、ぅ…!りゅ、締めす、ぎ、」
それでも穿つのをやめないから、敏感になったそこをなんども擦られて泣きそうになる。いや、もう泣いている。
「いお、っお…すき、す、きぃ」
「…っ、リュウ…、あなたはッ、そんなんだからッ」
「いぎ、ひ、い、おッ?いやっ、はげひ、いや、~~~ッ!!!
パンパンと打ち付ける腰が、痛いくらいで。
なんでイオが怒っているのか、おれにはわからなくて。なんでわからないのかも、わからなくて。
息が、できなくて。
朦朧とする意識の中、イオが鼻を鳴らす音が聞こえた気がした。



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