美L! #つまりそういうこと



俺は何をしているんだろう。ホテルに入った瞬間、後悔に襲われて、逃げたくなった。でも、もう後戻りなんてできやしないとわかっている。そもそも自分で決めたことを曲げたくなかった。こんなことでも。


いつも買っているブランドの新作がでて、割とどうしても欲しくて、所持金を確認したら、悲しきかな、2000円もなくて絶望した。
(どういうことだよ)
あまりの少なさに自分で驚いたくらいだった。まあ、あんだけ遊んでたら当然だろうけど。ちゃらちゃらするのも結構金がかかるんだよなあ、なんて、どうしようもない現実をぼんやり受け入れた。
けど、どうしようもなく欲しいものは欲しい。
どうしたものか。
手取り早く金を稼ぐにはやっぱり短期のバイトしかないだろうか。はあ、とため息を吐いて、まあそんなことしてても金が降ってくるわけじゃないから、無駄だし馬鹿らしいか、と思ってやめた。
仕方なく現実と向き合うことにして、駅前のベンチに座り込んで求人誌とにらめっこする。が、なかなか条件に合うものがなくて、やっぱりため息が漏れてしまった。
(もーめんどくせーー!!!)
そもそも高校生が働ける場所も少なければ、リュウの見た目で雇ってもらえる場所も少ない。求人誌を破り捨てたくなった。ぎゅうっとぐしゃぐしゃになる程強く握って、苛立ちを紛らわそうとするも、やっぱりイライラする。


そんなことをしていると、どうにも変な奴ばかり話しかけてくる。今まで嫌という程経験していることだから、軽く流していたけど、もう限界だった。
「なんだよおっさん。なんか用?」
どうにも見た目のせいで女に見間違われたり、加えて派手だからってナンパされるのだ。うんざりしながらシッシッと手を振る。声を聞けば男だとわかるはずだし、だいたいの男はそれでそそくさと去っていく。それでもしつこい奴ってのもいたけど、そういうのはもう無視した。
「かわいいね。どう?おじさんと遊ばない?」
(こいつホモだ!)
普段なら無視するところだが、イライラしていたから、当たるように喧嘩腰で話しかけていた。
「きっしょ、俺男にキョーミなし〜」
男は若干たじろいだが、それでもしつこく話しかけてきた。
うざい、帰ろう、ここにいてもいいことはない。俺は忙しいんだと立ち上がると、男はいささか近すぎる距離で、
「困ってるんでしょう?僕が助けてあげるよ」
と言った。
正直確かに困ってはいる。ピク、と体が反応して、動きを止めてしまう。その時点で多分おれの負けだった。
「そこまでしたいのかよ。…変態」
もう心は決まっていたのに。
「そうだね。僕は変態だよ」
ニヤニヤと笑う男はおれの心を見透かしている。

普段ならばそんなことを言われても断っていただろう。断言できる。男に興味はない。「そういうこと」をするなんて、吐き気がするくらいだ。
欲しいものがあって、お金がなくて買えなくて、なんてタイミングがいいのだろう。いや、悪いのか?

男から少し離れて歩く。ホテル街にはいることなんてないから、心臓の音がやけに早いし大きくて。でもそれはきっと高揚でもあるんだ。
ホテルについて、何事もなく中にはいると、男は金を渡してきた。想像していたよりよっぽど多くて正直ビックリした。
震える手で受け取ると、男は「かわいいね」と笑った。
今更冷静になってしまって、恐怖と嫌悪に襲われる。後悔が止まない。でも、戻れはしない。
カタカタ震える体を情けないと思いながら奮起させて、男に向き直った。
「こいよ」
色気もなにもない誘い方だとは思ったけど、そもそもこんなヤツに色気を使うとか、バカらしかった。

「ん、」
ちゅ、と軽いリップノイズを立てながら、男の唇が触れる。ぞわぁと、寒気がして、そういえばキスはしたことがなかったと思い出した。
おちゃらけているけど、純情だったんだな、おれ。
男の鼻息がうるさくて、思わず嫌だと首を振った。唇が離れていく安堵でホッと息を吐いたら、仕返しとばかりに舌を絡めるキスをされた。
「んん!?」
ちゅ、ちゅう、と、聞くに耐えない音が響いて、思わずキュッと目を瞑る。
そうすると嫌にその音に過敏になってしまって。それが逆効果だと気付いた頃には、どうしようもなく高められてしまった。
キスの雨が降り注いで、顔は朱に染まっている気がした。顔が熱いから。
すっかりおとなしくなったおれを抱きしめた男の、その、なにが勃っているのがわかって、「ひぃッ」と情けない声が出た。
「んふ、ふぅッ、んん…ゃ、」
嫌なのに、興奮する。嫌なのに、下半身が熱い。嫌なのに、もうわけがわからない。
「きみ、本当は初めてじゃないんじゃない?」
男は呆れたように強く責めてくる。じわ、と下着が濡れて、先走りが溢れていることを知った。でも、まだ決定的な刺激は与えられていなくて、それなのにビクビク震えて、快感の波が襲うのを、なんとかやり過ごそうとする。
「ひゃ!?」
いきなり乳首を摘ままれて、甲高い声が上がった。驚きも混じっているんだと、言い訳させて欲しい。
くすぐったがりは感度がいいらしいと、どこかで聞いたことがあるけれど、これじゃあんまりだ。
「ンン、んぁ…やめ、そこ、ッぃあ!」
かぶりを振って抵抗しようにも、もう力が入らなくて、弱々しく男の頭をつかんだ。
「痛いよ」
そんなおれに気を良くしたのか、男はあろうことか、おれの胸元を舐め回してきた。
「ひ、ぁ!んん、ん、んんぁ!」
びりびりと痺れるような、もどかしいような、そんな感じの気持ちよさで、じわじわと今度は耐え切れないほど出したくなってきた。
こういうことって、あんまり慣れていなくて、おれは未知の感覚を味わっている。さっきからずっと。
「も、おっさ、やだ、やだぁ!」
高められた熱は解放を求めているのに、そこまでは至らなくて、狂いそうだ。やだ、やだ、とぐずるようにおっさんを呼んで、グリグリと下半身を擦り付ける。
「やらしいね」
僕ももう限界だと、おっさんがいう。下着まで脱がされて、シミができてるパンツが放り投げられるようにベッドの端に追いやられた。
「ッ!!!!」
自分のそれをちょっと強くしごかれただけで、声も出すことができないまま達したことを、ワンテンポ遅れて理解した。腹までベタベタに濡れていたから。
精液とローションを混ぜておれの中に入り込んだ指は、ぐちぐちやらしい音を立てて、かき混ぜてくる。
「ひぃ、おっさ、ァ!きもち、わる、い…」
内臓が引きずり出されるかと思った。ほんの少し吐き気を伴うのに、指をキュッと締め付けると、良く分からない、さっきのみたいな、もぞもぞする?みたいな感覚に襲われる。
「気持ち悪い?そっか、慣れればすっごく気持ちいよ」
そう言って中を探ってきて、やっぱり情けない声が漏れてしまう。
じわじわ追い詰められているのはもう多分わかっているはずだ。それを笑っているんだから、ひどい。
くんっと、指を折り曲げられた瞬間、
「んあぁ!?!
視界が真っ白になって、大声が出た。抑えられなかった。
「は、ぁ…?」
とろとろと勢いがない精液が股間をびちゃびちゃに濡らして、また達したことを知った。
(なんだこれ!なんだこれ!)
男がにやにや笑ってる。やっぱり気持ち悪いのに、快楽をあたえてくれるから、かみさまみたいに思えた。しかしこれは気持ちよすぎて逆に拷問かもしれない。
「ここかな?」
ぐりぐりそこばかりつかれると、そのたびに視界が白んで、良くわからなくなる。
こんなんじゃ、狂ってしまう。
「いや!いやぁ!やめ、やめて…!ほんと、だめ、だめぇ…」
ジタバタと暴れてそこに当たらないようにするけど、そうしたらもっと深くまで指が入り込んできて、余計にくるしくなってしまった・
気持ちがよすぎて涙が出てきた。善がり苦しむ姿なんて、ほんと、男として恥ずかしい。
指が増えて、圧迫感は増すのに、バラバラに動かされると、確かに苦しさがあるのに、さっきの場所に当たる回数も増えるから、それもまた苦しい。
指だけでもこんなに苦しくて気持ちいいのに、もっと太いちんこで突かれたら…?
頭の中は恐怖がほとんどを占めているのに、体は貫かれることを望んでいるみたいに腰を振っている。
「そんなに焦らないで。すぐあげるからさ」
指を引き抜かれて、「あぅ…」って声が漏れた。それすらも気持ちよくて、気持ちよくて。
ひたりと太くて熱くてビクビク脈打つそれが押し当てられる。
耳元で「いれるよ」とささやいた声が欲情を孕んでいて、ぞわっと体が震えた。多分、期待で。

「ひ、ぐ、んんんッ!」
もう、苦しいなんてもんじゃない。苦しさを超える気持ちよさで、おれのちぎれそうな理性は完全に崩壊した。
そこからはもう、思い出せないことの方が多くて、喘いで泣いて善がって。おっさんの背中に抱きついて、揺さぶられながらいった。…いったのか?
それすら記憶にない。


シャワーを浴びたらどっと疲れが襲ってきた。
結局すぐに寝てしまって(いや、意識が飛んでいたのかもしれない)眼を覚ますと男が寝ていた。
やっぱり男の顔とか、体つきとか、全然いいと思わないし気持ち悪いのに、セックスの気持ちよさで全てが帳消しになる。
そっとベッドから抜け出そうとしたら腰が痛すぎて一瞬固まった。
「ぃ…って」
どろ、と精液も漏れてるし、何回したんだろうかって考えて、やめた。
それだけセックスの虜になったってことを認めたくなかったから。
金はもらってくけど、それよりももっと抱いて欲しいと思う。
ちゃっかりしているな、と自分でも思った。

「しっかし、こいつのテクがすげーのかな?」

自分が「そういうこと」の才能があるなんて、ちっとも思いつかない蔵王立。



「セックスって気持ちいっすね〜」
なんて爆弾発言をするのは、また別の話。




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