暗殺 #慰み



(どうして、こんなこと…するの?)
俺と渚くんは付き合ってた。それは必然だったのだというように、自然とくっついていた。
俺はそれが不自然なことだということには全く気づかなかった。それが、どれだけおかしなことなのかもわからなかった。
悲しいほど愛に飢え、愛を求めた結果がこれなのだろうか?
渚くんは少し興奮したように俺の方に寄りかかってきた。熱い息が頬にかかって、なんだかこっちまで変な気分になっていくから、嫌だ、とグッと身体を押しのけようとしてみるけど、その小さな身体からは想像もつかないほどの力で押し返されて、床にゴンと頭をぶつけた。少々の痛みに悶えている俺を、普段なら気遣ったりするのに、その余裕すらないのだろうか。本能的に恐怖を感じて身をよじる。無駄ってことはわかっていた。
ちゅ、なんてかわいらしい音でキスされたけど、噛み付くようなものだった。渚くんのそれは、捕食者がするものだった。
驚いて止めようとして、声を出そうとなんてしてしまったもんだから、ぬるっとした舌に侵食される。
ぐちゃぐちゃ咥内を荒々しく犯す姿は、おおよそいつもの渚くんとは噛み合わなかった。
「ん、んー!んぁ、ふぁ…なぎ、さく…っ」
やめて、やめてこんなの、渚くんじゃない。こんなの知らない。

いつもの彼はヘタレ気味で、暗殺者ではあっても『普段は』正直弱っちい。
それなのに…?
俺は結構経験豊富に見られるんだけど、そんな色恋沙汰には全く興味ないし、セックスとかも、別にしたくないんだよね。
だから、大いに焦った。どうしたらいいかわからなくなった。でも。
泣いたって渚くんはやめてくれない。
「カルマくんが悪いんだよ?」
の一点張りで、その体のどこにそんな力があるのかってくらいの力で押さえつけられていた。

ほんの少し反応を示した俺のそれに微笑みかけながら、可愛いと言いながら、渚くんはさっきみたいな荒々しさが嘘みたいなくらい、優しく優しく俺を抱いた。

最中にはすがるように涙を流して俺の名前を呼んで、離したくないというのが伝わってくるのに、くったりとした俺を介抱することなく去っていく姿が印象的で、それが彼のみんなに見せていない闇なんじゃないかと思った。

いつか、癒せる日が来るのだろうか。
これはセックスなんかじゃないんだ、と思う。
ただの慰みと偽善。

「恋人ってなんだろうねえ?」




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