暗殺 #その手を取るか




「なあ、本当にヤんのかよ」
「当たり前だろ。お前だってあいつの事めちゃくちゃにしてやりたいって思ってんだろうし」
「ま、そうなんだけどよ」
赤羽カルマは基本的に、表現の仕方が下手なだけで優しい性格である。(友人以外へのいたずらっ気が若干、いや、かなり度が過ぎてはいるが)
そのため怨みを買うことは多々有るのだが、今回はいつもと違っているところがある。
この男たちは、カルマを犯したいと思う、異常性壁の持ち主だった。
…いや、カルマは非常にルックスがいい。男を魅了してしまってもおかしくはないのかもしれない。特に、加虐心の強いこの男たちにとって、強気で勝気なカルマは格好の餌食だと言えるだろう。


「わざわざE組校舎まで来て何がしたいわけ?おれに復讐とか?まじで面白いね。あんなにコケにされてさ、恥ずかしくないの?」
滑稽すぎ、とカルマは不敵な笑みを浮かばながら言った。彼らが何を目論んでいるのかも知らずに。
エンドのE組の校舎は非常に劣化が進んでいる。
特にトイレなんかは、汚なくて利用するものは数少なかった。
今日は休日で、カルマはほんの少しホッとしていた。殺せんせーを暗殺しようと奮闘する姿を見られる心配がないからだ。
というわけで、男子トイレどころか、E組の校舎にはカルマと男たち以外の人間がいない。男たちにとって、それはあまりに都合がよく、思わずほくそ笑んでしまう。
「なに、笑ってんの。」
「いや?お前、俺らが何しようとしてんのかわかってんのかな、って思ってよ」
「はぁ?喧嘩売りに来たんでしょ?早くしてよ。俺早く帰りたいんだけど」
男たちの意図など全く汲みとれていないカルマは見当違いの返答をする。(案外外れてもいないような気がするが、あんまりにも楽観視しすぎていた。)カルマは負けるなんて、かけらも思っていないからだ。
「二人掛かりなら、お前だってさすがにこんなことされれば降伏するしかねえんだよ!」
そう言うと男たちは一斉にカルマに襲い掛かった。男の一人は体格がよく、カルマを強すぎる力で個室に押し込んだ。
「…ッ!なに、あんたら何考えてるわけ?喧嘩しに来たんでしょ?」
まだ、カルマは疑うことなく男たちが暴力的に復讐を仕掛けてくると思っている。
「んなわけねーだろ。お前、案外頭悪いのな。」
「ハ?そんな『頭の悪い俺』に期末で勝てなかったの、あんたらでしょ?ちょ、いいから離せ、」
むに、と唇が重なり合う。予期せぬ事態にカルマの脳内は混乱でいっぱいになる。離せ、と威勢良く言葉を紡いたカルマの口腔内に舌が這いずり回る。
「ん、んン!?」
じゅるじゅると舌先を吸われると、ぞわっとしてしまう。
嫌悪感と、屈辱的だが快感が混じって散々嬲られた後、解放されたカルマは、汚れた床にへたり込んだ。

カルマは女性経験が、実は全くない。
渚がイリーナにディープキスを食らっている時に好奇心旺盛に観察していたくらいで、そもそも男女の関係に頓着がない。淡白な人間といって間違い無いだろう。だって、殺せんせーを暗殺することが今の一番の楽しみなのだから。

そんなカルマの初めてのキスを奪ったのが男という事実と、しかもそれが以前コテンパンにしてやった相手だということにカルマはしばし莫迦のように呆然としていたが、自身が置かれている状況に、ようやく危機感を覚えたようで、カルマは激しい抵抗を始めた。
だが、二人掛かりで攻撃を仕掛けられてしまえば、混乱で正しい判断ができなくなっているカルマは簡単に抑え込まれてしまう。
「あー、最初はお前に譲るわ。俺処女嫌いなんだよな」
「やりぃ!じゃ、か・る・まくん!俺とセックスしよーな」
ガチャ、と個室の鍵が閉められる。男三人が入るには狭すぎる為か、見張りのためか、男の一人は個室から出て、カルマの抵抗の声を聞いて悦に浸っていた。
「何言ってんのお前ら!おれ、男!あんたらホモなの?!キッモ!」
なおも強気な姿勢をとり続けるカルマの腹に男は思い切りパンチを決める。
「ぐ、…あんたら、狂ってる…」
「まー、そうかもな」
でも。
お前が全部悪いんだよ、カルマくん、と男はカルマを軽々と持ち上げ、洋式便器に座らせた。
ズボンを剥ぎ、ボクサーパンツも取り払う。
カルマのほおに、カッと赤みがさす。自身の逸物をジロジロと『そういう』目線で見られるのは初めてだし、そもそも、人にわざわざ晒す場所でもないので、屈辱でじんわりと涙が浮かんだ。
「おいおい、もっと『強気なカルマくん』でいてくれよ。ツマンネ」
口ではそういうものの、男は興奮を隠しきれておらず、荒い息を吐きながら、カルマの着崩したワイシャツにも手を伸ばす。いたずらに乳首を弄われ、カルマは思わず、
「あぅ…!?」
と今まで出したことのない甲高い声を上げた。それが恥ずかしくて、すぐに口元を手で押さえてみたものの、どんどん過激になっていく刺激に耐えることができない。吐息は荒くなり、耳まで真っ赤にして、先ほどより多量の涙を流している。
「ぁ、あ!やめ、も、俺の負けでいいから!やめ、ヒンッ!?」
ピンっと乳首を弾かれれば、降伏宣言も最後まで紡ぐことができなくなる。
「うるせえな。お前は俺らとセックスするまで許されねえんだよ。わかる?」
「いや、いやだ!いや!いや!!!!」
泣き叫ぶカルマに、ひどい優越感を抱く。整った顔が涙でぐしゃぐしゃになっていく様は、どんどんと男の加虐心を煽っていく。
「おい、『カルマくん』?こ・こ、勃ってるじゃんか。そんなに乳首気持ちよかったのかよ?おい、こいつ思ったより淫乱だぜ!」
個室の外にいる男に語りかけるように大きな声でカルマにとって屈辱的な言葉を男は敢えて選ぶ。
「うわ、ちょと引く。そんなに感度いいの?もしかしてハジメテじゃないんじゃね?」
「あり得るな」
げへへと、下品な笑い声を上げながら、カルマの下肢に手を伸ばした男は、いきなり後孔にねっちょりとローションで塗れさせた指を突き立てようとする。
「ひぐぅ!いった、いたぃい!」
濡れそぼった指でも、ひどく痛がるカルマに、男はニヤニヤとした笑みを絶やすことなく『前言撤回。やっぱ処女だわ』という。それはそれは下衆な笑みで。
「優しくしてやるつもりなんてねえから。このまま挿入れちゃおっかなあ?」
死刑宣告を受けたみたいに、カルマの顔に絶望が浮かぶ。
ぼろんといきり勃った逸物を、見せつけるようにカルマの頬にペチペチと当てて恐怖に怯える姿を楽しんでいた男だが、
「やめ、それだけは、そんなの、入らない…!」
というカルマの悲痛な叫びに興奮し、ローションで逸物を濡らし、そのまま、カルマの密やかな孔に擦り付けていく。
「や、やぁあああああ!!?」
裂ける、痛い、死んでしまうのではないかというほどの痛みがカルマを襲う。
実際、カルマの小さな孔は裂け、血が出てしまっていた。
「う、わぁ、キッツ…お前さぁ、今どんな気持ち?俺はサイコーの気分だよ!ざまあ見ろ!」
「うっく、ひ、ぐ、いた、いたい、抜いて、」
気持ちよさなんて欠片もない。だってこれは復讐なのだから。
「うっ、出すからな!しっかり子種受け止めろよ!」
熱い逸物がびくんびくんと震えながら、じんわりと精液を吐き出していく。
カルマの意識はあまりの痛みにブラックアウトしてしまった。
もちろんもう一人の男には犯されたのだろうが、記憶にはない。
後ほど、いつの間にかメールアドレスを知ったようで、痛々しくもいやらしい、カルマのぐったりと白濁にまみれた写メが送られてきていたから、これは夢じゃないんだ、と実感させられた。


「カルマくん!カルマくん!?」
「ぁう…?なぎさ、く?」
目をさますと、渚の泣きそうな顔が眼前にあった。
ふと我に帰ると、その体はパリパリに乾いた男たちの精と、自らの血液が混じり合ったものが後孔にたっぷりと溜まって、溢れているわ、顔射の跡があるわ、洋服は乱雑に脱がされ、汚いタイルの上にぐちゃぐちゃに投げ捨てられているわで、ひどい惨状だった。
「…カルマくん」
ぎゅっと渚が抱きしめてくる。
カルマなんかよりも小柄な身体なのにもかかわらず、その腕は優しく、カルマの身体全体を暖めてくれた。
「ぅ、っく、なぎさ、く…」
決壊した涙腺はいうことを聞かず、涙が止まらなかった。
渚の包容力に一瞬救われるが、その後すぐに送られてきたメールに、現実に引き戻される。
「…カルマくんは何も心配しなくていいんだよ。僕が全部、片付けるからさ。」
そう笑う渚の目は、全く笑っていなかった。
その瞳は暗殺者のそれで、カルマは思わず身震いし、恐怖を覚えてしまった。
「大丈夫だよ…僕がカルマくんのこと、助けてあげる。」
安心して。
そう、彼は笑ったけれど、カルマは素直に頷くことができなかった。
殺意に満ちた渚の目が、怖かった。
(絶対に、許さないよ)
と、渚の目は言っている。
先ほどまでの状況なんかより、よっぽど怖かった。





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