暗殺 #まだ恋とは言えない



自分が女だったら、まだ救いがあったように思う。
内壁を抉られるように穿たれて、快楽に喘いでしまっても、女性器はそう言った風に作られているんだから。
こんな、排泄器官に自分に付いているものと同じものが、ズッポリと埋まっている。こんな恐怖はなかった。
難しい事をつらつらと並べ立ててみたが、結局カルマはこの男に抱かれ、悦ぶ事が酷く屈辱なのだ。
「助けて」
と言ったら、きっと皆助けてくれるだろう。でもそれはプライドが許せなくて、でも助けてほしくて。
(付き合いの短い烏間センセなら、イイかな…助けてもらっても。)
きっと彼なら何事もなかったかのように接してくれる。
カルマにとって、烏間はその程度の人間だった。…筈だった。


「センセ、助けて」
俺、もう先生に抱かれるのいやだ。
まさか自分から助けを求めてくるなんて思いもしなかった烏間は、柄にもなく動揺した。
助けたいとは思っていたが、こうも簡単に烏間を頼ってくるとは思ってもいなかったし、あまりのカルマの色気にも気圧された。
男に抱かれ、女になってしまったカルマ、その彼が放つ色香は、烏間を狂わせるのも致し方ないのかも知れなかった。


「…もう、赤羽は自由になれるよ。俺は知ってた。その事を今まで隠してて悪かった。」
そうして録音したテープをカルマに手渡してやった。勿論警察には通報済みだ。
「…なんで」
蚊の鳴くような小さな声でカルマは言った。
「なんで、助けてもらったのにこんなに苦しいの?俺、もう男なしじゃいきていけない。淫乱だって思うでしょ?でも、こんな身体にした先生を憎む事もできない…烏間センセ…おねがい…一回でいいから、先生の事忘れさせて…抱いて欲しい」
ゴクリと生唾を飲んでしまった。
カルマの事は、正直生徒として気になる、の度を超えてしまっていた事実があったからだ。
「俺は!赤羽が忘れたいなら、1度でいいなら、抱いてやる。でも、…ごめんな。俺もあいつと同じで、お前が好きだよ。一生徒を救う事の度を超えるくらい、好きだ。」
今度はカルマが驚く番だった。
いきなりの告白、急展開、でも烏間の事を何も知らない。
先生の代わりでいいのなら、正直一番付き合いの浅い烏間にと、そう思って提案した事だったから。
「…俺、あの先生のこと、なんも知らなかったし、烏間センセの事もよくわかんない。でも、烏間さんの事はもっと知りたいって思う。…これってなんだろう?」
幼いカルマは愛も、恋も知らない。
増して間違った方法でセックスをしてしまったほどにその重みを分かっていない。
「ゆっくりでいい。まずはキス、させてくれ」
「ん…うん…ッ」
思えば先生は強引なキスしかくれなかった。こんなに優しいキスがあるなんて知らなかった。
ふにふにとした感触は気持ちよく、ずっとこの瞬間が続けばいいと思った。
「…ごめん…センセ…俺、俺ね、先生の事、もっともっと独占したいよ。離れないで欲しいよ。…わがまま?」
「…ばかか。俺はお前が気になってる。もう好きってくらいに。そんな奴にそんな可愛い事言われて、わがままだなんて言えるか。」
「…手、繋いでて。先生の事、忘れるから。いつか、ちゃんとエッチしよ?」
ギュッと握った手のひらは、驚くほど冷たく、緊張しているのがよくわかった。
「当たり前だ。その前に殺せんせーを殺そう、な?」
「協力してくれるの?」
その口調はいたずらっぽく、いつものカルマに戻ったようで安心した。
紆余曲折あり、きちんと正式にお付き合いするまで、後…××日…。




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