暗殺 #救い上げる手



今日も始業のベルは鳴り、暗殺が始まる。俺の地獄と言う名の性交も共に始まっている。誰か気付いてくれないかと願う。助けてほしいとも、同時に誰にも気付かれずに死んでしまいたいとも。そんな矛盾を抱えながら抱かれるのにももう慣れた。内蔵が抉られる圧迫感にも、すべて吐き出したくなる気持ち悪さにも、こんな事を今まで何回繰り返したのかも分からない自分のおぞましさにも、慣れた。

抱え込んでいた自分の罪深い過去は、あっけなく暴かれ、何でもない顔で教師を続けていたあの男にまた犯されて、地獄が始まった。

あの男は昼休みにやってきた。それを知らせるメールを見たカルマは夜更かししたから、とあの男の居る保健室に向かい、そうして地獄の時間は始まる。
こんな日は朝から憂鬱ではあるのだが、どうにもならないから質が悪い。
「やぁ、カルマ。遅かったな」
いつからこんなに馴れ馴れしくなったのだろう。この男は、仮にも自分の元教え子になにをしているのか分かっているのか?
内心では悪態をつき、キッと睨め付ける眼光は鋭さを失わない。
服を脱がされた時から、吐き気が止まらない。
また堕ちて行く自分を想像したら、もう駄目だった。
下着まで脱がされれば、慣らしてきただろ?と言われ、不本意だがその通りなので頷けば挿入が始まる。
「あ、カルマ…相変わらずお前は名器だ…ッ」
最初こそ抵抗したが、「バラすぞ」と言われれば何も出来なくなる。何度も穿ち吐き出され、完全に昔を思い出した排泄孔は快感を拾う性器にまた成り下がってしまった。
殺したいほど憎い相手だった。
今はもう吹っ切れたと思っていたのに、こうして組敷かれれば憎しみはまた強まって、勝手に死んだ『先生』が蘇る。
貪欲に快感を拾う身体が憎い。言う事を聞かずに『先生』にすがりついてしまうから。
ずちゅ、ぐぽ…
鈍い音が断続的に響いて、羞恥心が煽られる。何度も突かれて、先走りと腸液が混じり合った中は、本物の女性器のようだった。
『先生』が満足しない限りは終わる事がないこの行為は、それまでに何度も達してしまうカルマに対しての拷問のようだ。
「せん、せ……ッ…ッ!!!!む、りぃ…も、れき、な…ぁ…」
ぐずぐずに蕩けた顔が見えるような体位で、『先生』に犯されている。なんだか、大好きだった『先生』が昔みたく、カルマを認めてくれている気がした。
…そんなのは、幻想なのに。
そもそも元から認めてくれてなど居なかったのだから。
「カルマ…ッ、お前がイク度に締まって…おお…いいぞ…うっ…」
「ッッ!!!」
最後は悲鳴すらあげられなかった。
カルマが愛だと勘違いしていた男の精が、ごぷり、と嫌な音を立てて垂れ流れていく。
偽物の愛情は一時だけカルマの心を満たしてくれた。本当に、一瞬だけ。
現実に引き戻された瞬間の絶望感は強烈で、毎度目眩がするほどだ。そういえば最近ろくに食事もとれないような状況。身も心も余裕がなくて。
そんなカルマを『先生』は心配してくれるだろうか。
今の『先生』はきっとしてくれないだろうな。などと冷静な頭は現実をよく分かっている。
(E組の赤羽業)
( いまの俺 )では駄目なのだ、と。
その現実はあまりにも無慈悲だった。
カルマは殺せんせーよりも先に倒さなければならない敵に遭遇してしまったのだ。
逃げてもゲームオーバー、仲間を呼んでもバッドエンド。
これまでに見た事のないほどやっかいな敵だった。
こんなところで足踏みをしている時間は残されていないのに、と唇を噛んでもどうしようもない。
殺せんせーを殺すんだという、執念じみた殺意に縋っている状況だった。とにかく今、カルマを突き動かしているものは殺せんせーへの殺意だけだ。
(ねえ、…俺、助けてほしいよ……)
幼い心は壊れる寸前まで追いつめられていた。今度もまた、殺せんせーが救い上げてくれるのか、それともやはり自分で倒すしか選択肢はないのか。
やり直しのきかない、人生と言うゲームは攻略が難しい。
「助けて…」
悲痛な叫びは暫くの残響の後、消えた。



…見てはいけないものを見たと、思った。
そして、様子がおかしかったわけとか、体調が悪いと言っていたわけが、分かってしまった。
助けてやらないと、とも思った。…けれど、自分が動く事で、彼を酷く傷つけるであろうと言う事も、烏間には分かってしまっていた。



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