Free! #はじめての×××



「じゃあ、行ってきます!」
颯斗がタンタン、とスキップでもしそうなほど上機嫌にSCへと向かう。
それを二人は微笑ましい気持ちで見つめていた。
最近、貴澄と真琴は颯斗の送り迎えを共にしている。

「確か、真琴も下に兄弟がいたよね?」
真琴とともに颯斗をSCまで送り届けた後、ふと思い出した、といったように貴澄は問いかけた。
真琴はキョトン、とした後を緩ませながら「いるよ」と答える。
きっとかわいい妹弟のことを考えているんだろう。貴澄はそんな真琴を微笑ましく思いながら見つめていた。
「…きすみ?」
微笑みを絶やさない貴澄に真琴は不思議そうに顔を近づける。ふいに触れる貴澄の猫っ毛がくすぐったい。それほど近い距離だった。
「ん、真琴とどこでシたらいいのか、考えてた」
きっと貴澄は微笑ましさとともに、欲情している自分にも笑っているのだろう。こういったら、真琴がどんな反応を示すのかも、視野に入れながら。
「ッ!」
ボンっと爆発したみたいに耳まで真っ赤にした真琴は、「そんな、すぐ、できない」と拒絶した。
二人が付き合いだしたのは、全国大会が終わって少し経った頃だった。
真琴の受験勉強が始まる直前の出来事で、真琴の頭はどちらに重点をおけばいいのかわからずオーバーフローを起こすほど混乱したが、押しに押した貴澄が勝って、晴れて二人は結ばれたわけである。
そんなことがあったのが、つい一ヶ月前のこと。
一ヶ月。
男性経験はおろか女性経験もない真琴には、それがどれほど貴澄にとって辛いことなのかが理解できていなかった。
できたことといえば、せいぜいキスくらいで。それも唇が一瞬触れるくらいの優しいものだ。
颯斗の一件以前から(もしかしたらバスケ部云々の頃から)真琴が好きな貴澄にとって、もはや耐えられないレベルであろう。
真琴の仕草や声は甘く、とろけるようなもので、貴澄の欲望を常に駆り立てる。
正直、一ヶ月我慢しただけえらいだろうと、自分を褒めてやりたいくらいだ。
真琴は、嫌だとは言わなかった。…嫌だとは。
「すぐにはできないって、なんで?」
僕たち付き合いだしてから一ヶ月も経つのに…と、貴澄は頬を膨らます。
こうすると、基本的にお人好しの真琴はぐっと押されてしまうのだ。
「…だって、貴澄の家には颯斗がいるだろ?おれの家には蘭と蓮がいるし…だから…できない」
嘘だな、とすぐに貴澄は見抜くことができた。
岩鳶の町にはないが、少し離れたところにラブホテルなんかはたくさんあるし、(高校生が入っていいものなのかは別として)颯斗だってSCにいる間はいない。
要するに、怖いだけなのだろう。
「まこと」
「…なに」
「大丈夫、優しくする」
「…貴澄、ずるい」
キュッと握った手を話さないままSC近くの公園を抜けて貴澄の家に向かった。


貴澄の家は、真琴たちの住む地域からそう遠くない。
「入って」
「う、うん…」
お邪魔します、と控えめに挨拶をした真琴の顔は依然真っ赤なままで、貴澄は少し嘆息する。
ここまで初心な18歳はなかなかいないのではないだろうか。…そう思ってしまうのは、自分が汚れているからなのだろうか。と。


貴澄の部屋はきれいに整頓されていた。
真琴の部屋も汚くはないのだが、なんだか物がない。そんな感じだった。
「真琴」
「ん…んぅ…」
ディープキスは初めてする。口腔内をねっとりと唾液で濡れそぼった舌でこねくり回し、唾液を交換しあった。
真琴は慣れない様子で、ずっと受け身の姿勢を取っていた。口を閉じることも、唾液を飲み込むこともできないようで、よだれがいやらしく垂れる。
酸欠で潤みだした深緑の瞳は、キラキラと煌いて見えた。いつまでも続けたい。
そう思うほど、真琴とのキスは気持ちが良かった。
「き、すみ…はぅ…はっ、」
いよいよ息が危うくなってきたところで、掴んでいた顎を解放する。
ぷはっと大きく息を吸い込み、少し恨めしいような瞳で見つめる真琴を見る限り、気持ちよさと酸欠でのものだろうと察する。けれど、どちらかといえば前者の感情の方が大きいのではないだろうか。
「きもち、よかったでしょ?」
「うる、さ…っは、はぁ…も、いいでしょ、おれ、も、かえる。かえる」
ふと真琴の下肢を見やるとそこは少し隆起していた。
やはり気持ちよかったのだろう。
…それは、貴澄だって同じだ。
「…セックス、しよ?真琴」
気持ちいいよ、さっきのキスなんかよりもずっと。
こんなのはハッタリだ。いや、予備知識は完全に頭の中に入っているが、真琴がそれに順応できるかはわからない。
けれどこのままでは真琴は本当に帰ってしまう。
それは何としてでも避けたかった。


「…ほんと?」
「うん。言ったでしょ、優しくする」
ちゅっと額にキスをする。真琴をベッドに押し倒し、またキスをする。
何度もなんどもキスをする。
次第に緊張がほどけていったようで、真琴はリラックスした様子で貴澄を見つめていた。
瞳は相変わらず潤み、心なしか先ほどより蕩けている。
一度お互い抜いてしまおうかとも考えたのだが、射精をさせてしまうと、後々しんどいらしいのでとりあえずひたりと、しっとりと汗ばんだ肌に手を伸ばす。
「っきすみ」
すでに二人のワイシャツは乱雑に放り投げられている。
まだ暖かいから、中には何も来ていなかったし、上半身は裸だ。
別に恥ずかしいことじゃない。いつも競泳で肌を晒している真琴にとっては、こんなこと大したことではないのだろうが、触り方によって、反応がこんなにも変わるなんて、真琴は想像もしていなかった。
貴澄の触り方は、優しく滑らせるようなもので、こそばゆい。
普段だったら笑ってしまうだけのものなのに、触り方一つでこんなにも。
「っきすみ!」
「なぁに?真琴」
「も、触らないで、おかしくなりそうっ」
「なっちゃいなよ。僕、そんな真琴も好きだよ」
殺し文句を放ったところで、貴澄は真琴の乳首に手を這わした。薄桃色のそこは、手の感触に敏感に反応する。
「ん…ッん」
次第に硬度を増し、色が熟れていく。
ズボンを脱がせれば、ボクサーパンツにはシミができていた。
「ほら、きもちいでしょ?」
「うう…きすみのばか」
きゅっと真琴が貴澄のそこに手を這わす。
「っ、まこ」
悪戯っぽい表情で、「貴澄だって、勃ってる、」と笑う真琴に、心がきゅんと締め付けられた。
「ごめん真琴。優しくできないかも」
ボクサーパンツを引っぺがし、赤ん坊がオムツを変えるような姿勢にする。
「わわっ!貴澄!」
潤滑剤をたっぷりと指に塗りたくって、孔にも塗って、つぷん…と一気に二本突き立てた。
「ンン…ーッ!」
異物感に耐え切れず真琴が大きめの声を上げる。
それでも貴澄は止まらなかった。
ぐちゃぐちゃと中をゆっくりほぐしてゆく。
案外すんなりと入り込むのは、排泄孔だからだろう。
馴染んだところでもう一本。
今度はさすがに真琴が苦しそうな顔をする。
「き、すみ…む、り…入らな、」
「ダメ。まだ三本目。あと一本」
「やめようよぉ…ひぐっ!」
こぽっと穴を広げれば、案外入りそうな気がする。
もう一本の指を入れ、孔が完全に広がったところで、貴澄は自身を取り出した。
「ひッ…!きす、ァアッ!!!!」
ずっぷん!
キツキツの中を味わう暇もなくピストンを繰り返す。
真琴は苦しそうに、けれど時折当たる前立腺への刺激に喘ぐ。
「やさひく、しゅる、ってぇ…んぁ!うそつ、きぃ!」
揺さぶる度喘ぐ真琴。
欲望は一気に弾け、中にびゅ、と精を吐き出してしまった。
「あ、あぅ…」
じんわりと広がる暖かな熱に真琴が喘ぐ。
気づけば真琴もトロトロした精液ともカウパーとも取れぬ液体を垂らしていた。
汗だくのまま二人はしばらく抱き合った。
繋がったことを確かめるみたいに。


「貴澄。」
「はい」
「嘘つき」
「はい…」
「…次は、ほんとに優しくしてね」
「真琴…!」
「………きもちかった」
「まこと!大好き!」
「…ん」

初めてのセックスは、強引に終わってしまったけれど、次がある。
貴澄の余裕のない顔は、思いのほか可愛かったから、絆されてしまった真琴だった。




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