Free! #援助交際



ああ、もう。どうしてこうなってしまったんだろうか。
思考回路がぐるぐる回るが答えは出なかった。結論から言ってしまうと、遙はお金に困ってしまっていて、ひどく悩んでいるのだ。
親の世話にはなりたくないからバイトをしようにも、競泳で世界を目指すと決めたからには、と練習時間でスケジュールはみっちり埋まってしまっていた。
困った。困った困った困った。
真琴なんかに言ったら、すぐに助けてくれるだろうが、それは遙のプライドが許せなかった。
そんなとき、『メールが届いています』。
一通のメールが遙の携帯に届いた。ここで遙の運命は大きく変わってしまうことになる。
『初めまして、七瀬遙君。君の泳ぎはすばらしい!僕にできることが会ったらなんでもサポートするよ!』というメール内容に、若干の戸惑いを感じたが、遙は基本的に自己防衛能力だとか、警戒心が薄いタイプの人間だったため、『ありがとうございます。うれしいです。』と素直にその賞賛の声を受け取った。サポートしてくれるとは一体,どういうことなんだろうか、などと思いながら。
それから毎晩決まった時間にメールが来るようになった。『しっかりごはんは食べたかな?体調管理は大事だよ!』だとか、『僕にできることがあれば言って。』と優しい言葉を綴られれば、金銭面で困っているということは相談事としてぽろりとこぼれてしまう。その日はタイムが伸びず、バイトの面接もスケジュールの都合で落とされ、精神的に参っていたんだろう。少し、顔も名前も知らないその彼に甘えてしまった。
『それは大変だね・・・。僕でよければ助けるよ!』ピロン、という電子音とともにまたしても女性の無機質な声が響いた。あまりの返信の早さに少し驚くが、『助ける!』という言葉に後ろ髪を引かれてしまっていた自分がいた。
さすがの遙も少し訝しんだが、今までのメールのやり取りを考えればきっと大丈夫だろうと、短絡的な考えで『お願いします』という旨を伝え、次の日、空き時間にその彼と会うことになった。
写メはもらっていて、落ち着いた中年の男で、垂れ眉がなんだか情けなく感じた。そんなところや優しいメールの文面が、親友であり幼馴染みの真琴に似ていて、なんだか笑みがこぼれてしまう。
『ハル、明日も泳ぐんだろ?体調管理はしっかりね?・・・ハル?』
真琴が話しかけても、なんだか上の空になってしまう。早いところその彼に会いたい。そう思ってしまっていた。


****


次の日、約束の時間がやってきて、定刻通りに指定された場所へ向かえば、柔らかな笑みを浮かべた彼が駆け寄ってきた。
「・・・すみません、おまたせして。」
「いいんだよ。じゃあ、行こうか。少し離れて後を着いてきてね。」
優しい笑みが何をもとめているのか、何となく察しがついてしまったけれど、もう戻れなかった。戻ったら、またもどかしい寂しさや、折れそうな心を一人で抱えなくてはならない。そんな気がした。やっぱり東京は、果てしなく無力な田舎人には・・・いいや。人間に冷たい街だから。
「はい」
歩いている間はとにかく高鳴る鼓動や、泳ぐ視線を誤摩化すので精一杯だった。
(きっと、セックスをする。)
そんなの、分かっていた。今、自分がどこへ向かっているのかも。援助交際をしようとしているということも。
ホテルの中に入るとフロントがあって、遙は思わずうつむいて横を向いた。視線が痛いほど伝わってくる。ゲイだと思われているだろう事実が怖くて恥ずかしかった。
ルームキーを手渡された男は、ニコニコと気味悪いほどの笑顔で遙の手を引いて歩き出した。こんなことには慣れきっているようだった。
いままで遙が信じていた【優しい彼】など、最初から存在しなかったのだ。もう、知ってる。
部屋に入るとベッドと、所謂アダルトチャンネルしか映らないテレビ、そして狭い風呂場があって、ラブホテルが初めての(というか性体験が初めての)遙は戸惑いを隠すことがいよいよできなくなっていた。
「じゃあこれ、先に渡しておくね。そんな顔しないで。初めてでしょう?優しくするし安心して。」
「え・・・?!」
渡された封筒はずっしりと重たく、遙は突っ返そうとしたが、彼はかたくなに拒否をした。
堂々巡りになってしまう、と遙が折れ、その封筒を肩にかけたショルダーバッグに突っ込んだ。ひどく落ち着かなくなってしまった。こんなにもお金をもらってしまったらもう、セックスをするしかないし、それ相応の対応をしなければ・・・と。
ああもうどうしたら良いんだろうか。キスもしたことがない遙に、いきなり男性とセックスが果たしてできるのか、痛みはないのか・・・様々な不安が心の中を掻き乱して行く。もはや吐き気がするくらいだ。
「遙君、ちゅーしようか。まずはそこからでいいよ。ゆっくり始めよう?」
こくんと弱々しく頷けば、そっとバードキスを送られる。少しかさついた唇は、ざらりとしていて気持ちよくはなかった。けれどなぜかもう一度したくなって、今度は遙からキスをした。
「ん・・・ッ!」
ぬるん、と彼の湿った舌が遙の唇をなぞって、驚きで開いた口に侵入してくる。思わず嚼んでしまったけれど、男は笑って『かわいい』といった。意味が分からなかった。
ぬるぬるした舌で口内を犯されれば、呼吸ができなくてはふはふと合間合間に息を吸った。遙は鼻呼吸をしたら良いということすら知らなかったから。
舌をじゅ、と吸われて、長い長いキスが終わる。名残惜しそうに銀色の唾液の糸が2人の間にできて、やがてぷつりと切れた。
「はーッ、やさし、く、する・・・て・・・は、は、言った・・・!」
遙はその場にしゃがみ込んでしまった。完全酸欠状態に陥ってしまったようで、ベッドまでの距離が果てしなくとおく感じた。
よろよろとベッドにダイブし、呼吸を整えたところで、ハッとした。ココは休む場所じゃない。これからもっと激しくいやらしいことに使う場所だ。
「大丈夫・・・?ちょっと無理させちゃったねごめんね。ン」
額に唇が当たって、頭を撫でられて、なんだか絆されてしまった。流されやすく、いろいろなものに巻き込まれやすいのは、どうにも治らないらしい。
彼は軽々と遙を抱き上げ、ベッドの中心へと半ば放り投げるように遙を寝かしつけた。
「ッ、んんん」
またキスをされて、少しずつ気持ちよくなってきたのか。わずかに隆起した自身をスラックスだけ脱がされて確認しまた、「かわいいね」と笑う。
『かわいい』
女みたいな名前が嫌いで、女扱いなんてされたくなかった。
けど、これはなんでだろう、すごく心地よく遙の心に響く。じんわりと都会の寂しさで冷えてしまった心が温められて行く。
「もっと、いってくれ」
「ん?」
「かわいい、って。それで・・・ンッ」
「かわいい、かわいいかわいいよはるか!」
そういい、抱き寄せキスをして、反対の手ではローションを暖める。器用なものだ。
十分に暖まり、濡れた指を、ゆっくりと遙のナカに挿入して行く。初めは一本だけ。殊更ゆっくり、ゆっくり。
「ん、んぅ・・・」
「くるしいかい?」
「へぇきだ・・・!早く、せっくす、してくれ、よ・・・」
もっともっと満たされるだろうか、セックスをすれば今よりもっと寂しくなくなるだろうか。そんな期待から出た言葉だった。
正直、異物感は結構なもので、一本でも気持ちいいというには程遠い。けれど、ナカをぐりんとかき混ぜられるのは嫌いじゃなかった。
少し緩んで、遙の呼吸が落ち着いてきたところで、いよいよ前立腺を探す。人差し指を第二関節ほど入れて、折り曲げたところにしこりがあって、それをトントン、とノックしてやる。
「ふ、ぁああああああ!?」
遙の口から今まで聞いたことのないような大声が出た。悲鳴のような、けれど艶やかな声は男の腰に酷くキタ。正直、今すぐに入れられる状態くらいにはイチモツは勃起している。
けれど優しくすると約束したのだから、それはまもらなければ次がなくなってしまう。そう考え、ぐっと我慢した。
前立腺は刺激するたびふくらみを増し、遙の自身は嬉しそうに大量の涙を流している。快楽が強すぎるせいか、まともな言葉を発したことは、前立腺を刺激してからはなかった。
きゅう、とナカが痛いくらいに締まって、しこりが大きく膨らんだ。瞬間、びゅるりと大量の精液が遙の脱がしていなかったワイシャツ、顔にまでかかり、とてつもなく淫らな状態になった。
「は、は・・・?あ、ぁ?○○しゃん・・・おれぇ・・・?」
「ごめん、限界。遙君やらしすぎる」
ずりずりと解けた後孔にイチモツをすりつける。もはや我慢などしていられなかった。「やだ、も、む、り」という遙の声も聞こえないくらい彼は興奮していた。
「ごめん、ねっ!」
「あぐ、あっ、っ、あー・・・」
遙の自身はどろどろとした精液を絶え間なく垂れ流している。もう終始イキっぱなしでトんでしまいそうだった。
パンパンパン、と肌がぶつかりあう音、じゅぷじゅぷと腸液と彼のカウパー、ローションが混じってストロークする度いやらしく響いた。
遙の頭は真っ白で、ただひとつ思うのは、(こんなにきもちいいバイトがあるなんて・・・)という何ともズレたことだった。
彼は速攻で射精し、遙の射精が止むまでずっと頭を撫でてくれた。優しい,人だった。



****


「遙くん、今日はありがとうね。」
「いえ、こちらこそこんな大金頂いてしまってスミマセン。・・・あの」
「ん?」
「また、会えませんか」



<<< ◇ back ◇ >>>
<<< ホームに戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -