Free! #暗闇の底に落ちていく



きれいごとだらけの世界でどう生きるんだ?
堕ちるも清く生きるも自分次第だった。清らかに生きるのは非情なほど難しく、けれど人々は軽々しく清く生きろと言ってくる。
堕ちるのは簡単だ。その身を投げやってしまえば良い。
あの日、俺は楽な方を選んだだけだ。身を委ね、快楽に堕ちて行く。
「は、はぁ・・・ッ、ア!?」
ビクン、ビクンと身体が大げさに跳ねる。苦しさを感じるのはこういった一瞬で、チカチカと白む世界が光っている。
(そろそろか・・・)
自分の理性の箍が外れるんだろうという兆候も分かるようになってきた。だから何だろうという話だけど。
苛むような強い快感は時に苦しいくらいなので、早いところトんでしまいたい。
みんな悦ぶ、良いことだらけじゃないか。俺は気持ちがいい。相手も気分よく、そしてやはり気持ちいい。
「遙くん、すごい、よ・・・!く、ぅう・・・」
男のそれが質量を増して、さらに内壁を圧迫してくる。俺も、男も限界が近い。もう、何も考えられない。
「ア、アアアア・・・!はーっ、はっ、アア!」
「は、はー・・・あ・・・っ、ん・・・」
なかに感じた熱が抜けて行く。男の吐き出した粘液でぼってりと腹が重たい。なんだかひどくつかれてしまって、そのまま重たいまぶたがくっついて、深い眠りに落ちて行った。
正直俺は被害者な訳だったが、今となってはそんな感覚はなかった。こんなに気持ちのいいことを教えてくれた男に感謝したいくらいだ。
あれから定期的に男と会っているけれど、次第にそれでは満足できなくなって、夜の街をふらりと歩くようになっていた。
「君、暇なの?よかったらさ、オジサンとイイことしない?」
「・・・はい」
こんなの、別にどうってことはない。また、溺れさせてくれよ。
快楽の波は、たゆたうようでひどく心地よい。『溺れている』なんて表現を使っているが、優雅に泳いでいるような気分だった。

「いやあこんな若い子とヤれるなんて、今日は運が良かったなあ」
ネクタイをほどき、男はきしむベッドに遙を押し倒した。性急にもとめられるのは嫌いじゃない。情は要らない。とにかく掻き乱してほしかった。
口淫も少しずつ好きになっていた。ビクンビクンとふるえ、時折質量を増し、射精する瞬間にはどくどくと脈打つ感覚。そして何より、急所を遙が握っているという優越が堪らなかった。
そして、口内も性感帯なのだということを最近知った。口内に暖かく、粘っこい精液が吐き出された瞬間、遙の自身はフルリと震えてしまうし、ゾクゾクして早くナカにこれをぶち込んでほしいと思ってしまう。
「ん、んぶ・・・ッんんんーーー!」
精液の味が一人一人違うのも面白くて好きだった。甘かったり苦かったり、精液はおいしいと感じるようになった。いよいよ戻れないところまで来てしまったという自覚は、これっぽっちもなかった。だってこれは遙のもとめた自由なのだから。
ちゅぽん、と、精液を飲みきった遙がイチモツから唇を離す。赤らんだ顔、口元に残りぷるりと光る精。何もかもがヤらしかった。
「・・・おじさん、」
すり、と遙は猫のように男にすり寄る。もういい加減自分も気持ちよくなりたかった。ワイシャツの裾をキュッと握りしめる姿は少しけなげにも見える。けなげさとは程遠い行為を望んでいるけれど。
「君はずいぶんエッチなんだね:
遙は制服をまとったままだった。ブレザーを脱がせ、ワイシャツのボタンをゆっくりと外し、すべすべの若々しい肌を男は堪能しているようだった。
一方、遙はというと、それもまた気持ちがいいには良いのだが、もどかしさが大きく、いやらしく腰をくねらせていた。
(はやく・・・欲しい)
ただ、遙がセックスをするときには、たいてい相手の男が主導権を握る。まだまだセックスに積極的にはなれていない(さそったりできないという意味で、だ)遙は所謂マグロにちかかった。
「・・・んあッ」
不意に胸の飾りをキュッとつままれた。決して痛いとかというほどではないのに、的確に遙が一番快感を得られる強さでつまんでくるから堪らなかった。
びく、びく、と自身が震えて、少量の精液がこぼれてしまう。じんわりとスラックスまでにじんでしまって、恥ずかしさで消えてしまいたくなった。
「かわいいね」
ちゅう、と今度は赤ちゃんがおっぱいを吸うように胸をなめ,吸われ、どうにもならない快感が遙を襲う。早く入れてもらいたくてたまらなかった。
「・・・あの、あ、の、ああッ」
声を出して懇願しようにも、それを遮るように快感が襲ってくる。耐えきれず遙は『抱いてください』と叫んだ。悲鳴にもちかかった。
「やっと言ってくれたね。」
その言葉を男は待っていたのだ。遙がマグロ気味なのも知っていた。それを壊して、乱してやりたかった。
そこからは性急にことが進んだ。
遙はあらかじめ準備をしていたけれど、ローションを使ってぬるぬるにした指で、何度もイカされてへろへろのドロドロ状態のまま挿入された。ナカは程よく緩んでいるのに入り口は狭く、男のイチモツをきゅんきゅん締め付けるから、さんざん遙の痴態を見せつけられていた男も限界をすぐに感じ、口内射精したときよりもさらに多くの精液を、遙の腹の中にぶちまけた。
遙はその間うわごとのように、『きもひいい、』だとか、『ふぁああ・・・』と言ったほぼほぼ声にならない喘ぎ声を漏らしていた。
「ア・・・ナカ・・・いっぱい・・・しゅご・・・」
もうろれつが回らないのか、つかれ過ぎて眠たいのか、遙は舌足らずな喋り方で、幸せそうに腹をなでた。
(やっぱり、俺にはこれが向いてるんだ)
堕ちて行くのは、簡単だった。頭も回らなくなって遙は、そんなことを考えていた。

堕ちた先には幸福が。



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