Free! #見たことのないおまえ



ハルはマグロなんじゃないかと、時々思う。

セックスに及んでも、無口なのも変わらずだし、顔は断固として見せてくれない。

内壁はうねって、射精もするからちゃんと気持ちいいんだろうが、あまりにも喘がないから、時折不安になる。

こいつの表情筋は、最近は緩む事も増えたが、まだまだ固い。固すぎる。

それはセックスのときも同じなのかもしれない。

それを悟られまいと顔を隠しているんじゃないか、と不安になってしまってどうにも駄目だ。

声は押し殺すし、たまに見せてくれる顔は耐えるような苦しそうな顔だったりするわで、見てるこっちが痛々しくてたまらん。あまりに痛々しいから、思わず萎えそうになる(いや、萎えねえけど)

「ふ、くぅ…ん、り、ん…」

今日もハルは涙を流し、迫りくる快感の波にぐっと耐えていた。

(くっそ、やっぱ好きだ…かわいい)

控えめだけど、確かに喘いでる、と思う。付き合って、抱き合うまで知らなかった艶やかで、エロチックなそれは俺の心にじんわりとした満足感を与えてくれる。

俺が遙を抱いている。すべてを手に入れている。その実感が湧いてくるから、ハルと抱き合うのは好きだった。

くんっとそれを実感する度に質量が増していく。ハルはまた少し苦しそうなうめき声を上げ、ビクン、と身体だけ顕著に震わせた。

(ま、喘いで乱れろとか無茶な話だよな…)

こんな健気なところが…

「かわいいな」

「…?!ッ、ばか、りん、ふぁ…あ、あ、あ」

思わずぼそっと呟いた瞬間、中が激しくうねって、きゅううううと強く、搾り取られるんじゃないかと言うほど締め付けられた。

「…オイハルッ!し、めすぎだ、ばか」

ぐっと射精感に耐えて、ハルを小突いた。ら、ハルがお前の方が悪いんだとでも言いたそうな目で睨みつけてきた。

「んだよ」

「おまえ、俺が、ッどれだけがまん、んぁ、してたと、ふぁ、あ、あ、あ、あ…ずる、い。可愛いなんて、ずる、い…りん、すなおになれなくて、ごめ、んん」

遙は淡白でも、マグロでもないのだ。ただ、どうしようもなく理性が邪魔をしていた、それだけ。

男が男に尻の孔を嬲られ、イチモツを銜え込んで、更には気持ちよくなって喘ぐなんて、恥ずかしかったのだ。

それで、必死に我慢してきた。それだけ。

それが俺の一言で、すべて決壊した、…そう、俺の何気ない一言で。

!)

グイッとハルの脚を持ち上げて激しく鵜がいてやる。

正常位が好きだ。ハルの綺麗な顔がよく見える。(今は惜しげもなく晒されていて、すごく幸せだ)

「うわ…ッ!や、やめ…ろ!りん、駄目、だ、めだ…!」

「ハル、ハル!かわいい、かわいい」

「うるさい!言うな!ばか」

うるさいうるさいと喚きながら喘ぐハルの耳は真っ赤で、『言うな』とかは嘘だとよくわかった。

「…りん、」

「ん?」

「すき」

もう1ラウンド、ヤろう。そう心に決めた瞬間だった。

ハルはこれまでにないくらい喘いで、イって、泣いた。とても可愛くて、可愛くて、もう愛しさで心はいっぱいに満たされていた。



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