Free! #悪夢、或いは。



なんだ、なんだこれは、どういう事態だ。なんでこんなことになっているんだ…俺はただ…。
こんなのあんまりだ。
嫌な夢、あんな悪夢から解放されたくてとにかく走った。その先にあったのは更なる悪夢だった。
「はっ、はっ、はっ、はあっ…くそッ」
びっしょりと汗をかいている。シャツに染み込んで気持ち悪い。でもホテルには戻りたくなかった。
真琴の無垢な寝顔をこれ以上見たくなかった。タイムに、結果に、スカウトに、こんな風に怯える自分と全く違うように見えて。辛かった。
走って、走って、体力の限界が来たところで止まってしまう。これ以上走れない。ここでも、動けなくなっている。
陸の上はもっと不自由で。燻る感情、苛立ちは高まるばかりで。
汗を強引にシャツで拭った。そして、少し冷静になって気付いた。
「ここ、どこだ…」
知らない土地で知らない道を走ったことが災いして、治安の悪い区域へと入り込んでしまったことには気づいていたが、戻る道も分からないなんて。
しくった。
元の道を戻ればいいだけだ、なんて呑気なことを考えていたら、さらに迷って路地裏。そしてそこにはどう見ても普通でない男が、突然現れた遙をニヤニヤしながら見ていた。
その目は怪しく光って居た。まるで獲物を見つけた野獣みたいに。
「ッ、」
瞬間、ゾッとする程の寒気に襲われる。男の目が…
「おい、あいつ、めっちゃいい…」
とにかくこわかった。
逃げないと、と思うのに、恐怖かいままでがむしゃらとも言える程走ってきた疲労か、身体が一行に言うことを聞かない。
「、おい、何を…っんん!?」
押し倒された、と気付いた時には力いっぱい押さえつけられ、キスをされていた。
「んむ、んんー!」
押し返したいのに腕に力が入らない。それか男の力が異常に強いのか。
とにかく、抵抗しないと、と思うのに声を発することも、身体を動かすこともままならない。
そうこうしているうち、服を脱がされてしまい、羞恥に襲われる。恐怖にも。
「やべー、筋肉超綺麗に付いてる…」
ひどく興奮した様子の男がべろりと腹を舐める、「はは、汗でしょっぺえ」と笑った顔が、感触が、全てが気持ち悪過ぎて吐き気がした。
声を押し殺して体ではできていないが心では抵抗をやめない。
睨んでみても効果はなかったけれど、どうしたって屈したくなんてなかった。
それから、ねちっこく舐められたり、かと思えばさわさわ緩やかに擽るように身体中を弄られるうち乳首がぷっくりと腫れ上がり、性感を覚えるようになっていく。
「ん、んっ…」
声を上げてしまいそうな自分が悔しくて唇をちぎれるんじゃないかと言う程に強く噛んだ。
実際、唇は切れてしまい、血が滲んで鉄のような味が口内に広がる。
「オイオイ、噛むなよ」
またキスをされて、無理やり舌を入れられる、歯を舌で撫ぜられる。
ぞわりとした、たかがキスなのに、またしても快感に襲われ、少しずつ存在を主張し始めた自身が震えた。
(うそ、だろ…)
こんな男たちに嬲られて興奮していること、こんな場所で、こんな状況で…と言うことが信じられなかった。
「ほらな、やっぱり俺好みの淫乱!」
とまた独り言を言うと男はズルっと遙のジャージをボクサーパンツごと引き下ろした。
今日は水着を履いていない。引き摺り下ろすのはわけがなかった。
ブルンと勢い良く飛び出した遙の自身は、少量のカウパーを垂らしていた。
「やめろ!やめろ、やめ…」
ポロポロと情けなく涙が落ちて、脱がされた汗を吸い込み湿るシャツに一瞬染みを作り、すぐに消えた。
あまりの屈辱にようやく動いた身体でジタバタと激しく抵抗してみるが、やはり効果は全くなかった。
「一回イッとくか?後がつれーぞ」
「誰が…!覚えてろよ…!あぐっ、」
キッと睨むが、尻の窄みに指を突き立てられた瞬間、あまりの痛みで目の前がチカチカした。抵抗なんてできる程の余裕もなくなるほど痛かった。
「ほら、そう言う生意気な口聞いてると損だよ?」
「『イカせてください』は?」
そう言えば楽になれるだろうか…こんなに痛い思いはしなくて済むだろうか。
「ぃ、かせて…」
「あ?聞こえねーなあ」
「あ゛あ゛!いだ、いだい、ッ、イカせてください!イカせ、て…くださ…!」
遙のボソボソとした声では満足出来ないとさらに指を奥深くまで突き入れようとする男に悲鳴を上げながらイカせてくれと大声で懇願した。
…情けなくて死にたくなった。
勿論、突き入れようとしても潤滑剤もなしにしては痛みを与えるだけで先へは進まない。
男は遙がしおらしくなったことに満足してようやく指を抜き、どろりとしたローションをたっぷりと広げ、手のひらで温め始める。
「あ、あ、あ、ああ…」
まだ、おわらない。
さすがに遙もそんなに性に疎いわけではない。それに先ほどまでの行為を鑑みれば答えは簡単だった。
(犯される…!)
「嫌だ…ッ!頼むから…やめてくれ…!」
つぷん。
今度は簡単に入り込んだ指は、探るような動きで遙のナカを掻き分けた。
最初は気持ち悪さから声がでた。
「ん、ふぅ…きもち、わる…い…」
異物感は激しく、簡単に入り込んだことに対する嫌悪感も凄まじい。
吐き気がするような、けれど現実感はまるでないのが不思議で。
朦朧とする頭が、男の全てを否定する。
「だいじょーぶだって。直ぐに気持ちよくしてやっから」
そう言うと男は慣れた手つきで前立腺を探った。
遙はその間ずっと呻いていて、涙も止めることができないまま、僅かに残ったプライドがズタズタにされていく感覚を、やはり朦朧とする頭で味わい続けた。
「ッ!?」
「ぅ……ッ、や、やめ、ろ…ヒッ、 うぁああっ?!」
トントン、としこりをノックされた瞬間、高ぶりは爆発し、ドロドロの精を垂れ流していた。
普段の遙からは想像出来ない程甲高い声を上げて、遙は盛大にイった。
「あ、ぁあ…ふ、ぅあ…」
激しい射精の余韻は大きく、更にポッキリと折れた心では男が指を増やしても、更には挿入しようとしても、抵抗なんてできやしなかった。
「じゃ、たぶん処女?だよな?いただきまっす!」
「あ、あああああ!ひぁっ、あ、あ、ひ、」
猛烈な違和感と快感が遙を襲って、このまま快楽の海に溺れたくなる。
いや…。
(これでいいのかもしれない…)
抗わず、男を受け入れれば、何も考えずに快楽に溺れられる。
いや、もしかしたら快楽の海を泳げるかもしれない。
これでいい、これで…。
これは悪夢なんかじゃなかった。希望への道を教えてくれた。
何に怯えることもないのだ。
(俺は、俺の居場所は…)



first ◇ back ◇ >>>
<<< ホームに戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -