Free! #C



Side:M
ちかちかと光るライトがまぶしい。携帯が鬱陶しいくらい震えている。
誰かと思えば…ハルだった。
数件のメッセージ。久しぶりのメッセージ。
『今から行く。』
『バス降りた。お前んちどこだっけ』
『真琴、会いたい』
真琴、会いたい…って、ハルが言ってる。
幼馴染みとも呼べなくなった存在の俺に会いたいと。
すぐに返事を返す事が出来ずにテンパっていると、チャイムが鳴った。
じれているのか、怒っているのか、ハルであろう人物は何度も何度もチャイムを鳴らした。
「…ッハル!」
「お前、家、怜には教えて何で俺には教えてくれなかったんだ…。俺だって、真琴に会いたかったのに…こんなに、すぐに会えるのに、なんでだ!幼馴染みだろ!なんで、就職した事も、何もかも、教えてくれなかったんだ…」
春先、まだ寒い中走ってきたのだろう、鼻先を真っ赤にしたハルはやっぱり怒っていた。
でも、そんなの誰が見ても分かる事で、俺はやっぱり真意が読めなかった。
なんで来たの?なんで?分からない、ハルの考えてること、何も分からない。
【幼馴染み】とハルは言った。でも、もう文字通り幼馴染みで、友達じゃないのかな。
やっぱり、昔から一緒だったから?今は凛の方が仲がいいもんね。そうだよね。
俺ってもう、用済みかな。こんなにハルの事好きなの、もう分からないかな。ハルちゃん。
「ッ違う!お前、何も分かってない…!俺はお前が何であっても、きっとこうしてた!お前と出会ったのが凛より後でも、怜より後でも、きっとお前を選んだ!…お前が好きだ…真琴…お願いだから、帰ってきてくれ…」
いつしか真琴の特技だった心情を読むと言う行為は、遙の方が達者になっていたようだ。
正確に心情を読み取り、真琴の欲しい言葉をくれる。
「お前だって俺の事好きなんだろ…?」
苦しそうな顔は、いつかの祭りでの1シーンを思い出させるようなものだった。
ゆらゆら揺れる水底の瞳が綺麗で。優しい声が嬉しくて。
玄関だということも忘れて俺はハルに抱きついた。
「好きぃ…!ハル、ハル、はる…はるちゃ…忘れられなかったよ、おれ、やっぱり、ハルじゃなきゃ駄目…お願いハル…俺の事離さないで…」
ハルが笑って、「当たり前だ、お前は俺のものだ、真琴…」なんて言うから、もう、涙が溢れて、止まらなかった。




<<< ◇ back ◇ >>>
<<< ホームに戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -